繰り返される不平等の逆U字波形
評者 BNPパリバ証券経済調査本部長 河野龍太郎
『21世紀の資本』でピケティ教授が発見したのは、戦後に縮小した先進国の不平等が、1970年代以降、再拡大しているという事実だった。本書は不平等をグローバルな視点で分析したもので、昨年、欧米で大きな話題をさらった。
まず2008年までの20年間で誰の所得が伸びたか、アフリカの最貧層から米国の超富裕層まで順に並べ分析する。先進国を中心にトップ1%の所得は65%も増加したが、最大の負け組は先進国の中間下位層で所得はほぼ伸びていない。最大の勝ち組は、中国などアジアの高成長国の中間層で75%も所得が増加した。先進国では、超富裕層の勝者総取りと中間層没落で不平等が拡大したが、中国など人口の多いアジアで所得が増えた結果、驚くべきことに近年、グローバル不平等の拡大は止まり、縮小の兆しすら観測される。
分析期間の20年間で、13億人の中国経済が世界経済に組み込まれ、貧しい農村から豊かな都市への労働移動がほぼ完了した。この間、先進国ではアジアで作られた安価な資本財で労働が代替されるなど、イノベーションとグローバリゼーションの相互作用で不平等が拡大したのである。
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