9月2日、ロシア極東のウラジオストクで行われた安倍晋三首相とロシアのプーチン大統領との首脳会談の結果は、日本が領土交渉と日ロの戦略的提携を進めるうえで大きな意味を持つ。
日本側の基本戦略はわかりやすい。経済協力や国際問題に関する協力関係をこれまでとは質的に異なる段階に高めることによって、日ロ間最大の懸案である北方領土問題の早期解決を図るというものだ。わかりやすく言い換えると、「経済協力、国際問題に関する協力、文化交流、人的交流、領土問題」を一つのかごに入れて「抱き合わせ販売」することを日本政府は考えている。
ロシアが最も関心を持っている経済協力については、5月6日にロシア南部のソチで行われた日ロ首脳会談で、安倍首相がプーチン大統領に8項目から成る経済協力、人的交流などの包括的な関係発展プランを提示した。日ロの一部には、この提案が「絵に描いた餅」になるという見方をする人もいた。そのような懐疑的な見方を一掃するために、安倍首相はロシア経済分野協力担当相を新設し、首脳会談前日の1日に、世耕弘成経済産業相に兼務させた。世耕氏は安倍首相に同行し、プーチン大統領との会談に同席したことで、「安倍政権は本気でロシアとの経済関係を進展させようとしている」というメッセージを伝えることに成功した。今後、世耕氏が対ロシア外交において果たす役割は高まる。特に世耕氏と日本語に堪能なロシアのアントン・ワイノ大統領府長官の間で個人的なチャネルが構築されれば、経済問題だけでなく、北方領土問題についても重要な調整を行うことができるようになる。
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