資金も人材もなく果敢に挑む姿に驚き
評者 福山大学経済学部教授 中沢孝夫
著者自身が集めた一次資料を駆使することによって、外食産業の国際化プロセスを描いた力作である。
日本企業の海外進出に関しては、1980年代からの北米、90年代に入ってからのASEAN(東南アジア諸国連合)、そして2000年前後からの急速な中国展開がさまざまなかたちで伝えられるが、その主な対象は製造業だった。
それに対して本書は、近年もっとも活発な「外食産業」の海外進出の実態を、大手チェーン店だけではなく、個人営業に近い小さな店までも対象とし、120社を超えるヒアリングをもとに、過去と現在そして今後の課題を明らかにしたものである。
評者も製造業を追いかけ、ASEANと米国を中心に100社ほど調査をしたが、外食産業の抱える進出の隘路も似たようなものであることがよくわかった。そして近年、バンコク、マニラ、ホーチミン、ジャカルタといった都市で、鮨などの高級店以外の、居酒屋、ラーメン店、カレーハウス、牛丼店、あるいは日本発のピザやスパゲティも提供するイタリア料理店などが手軽に利用できるようになった背景がよくわかった。
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