17世紀に黒い白鳥が発見されて以来、「ブラックスワン」は常識が当てにならないことの象徴となった。ありえないと思われていたシナリオが現実化すると、その衝撃は甚大なものになる。不確実性に満ちた2016年を迎えるに当たり、ポジ・ネガ双方の「まさか」に思考実験で備えておきたい。
南シナ海における米中対立は、表面上は「米中が出来レースをしている」ように見えるかもしれない。しかし、米中両国にとっての南シナ海の意義を考えれば、共に簡単に譲歩し合える問題ではない。
中国は、南シナ海で進める軍事拠点化を完了すれば、基地間の相互支援によって南シナ海を面で押さえることができる。これは、米国の世界戦略を根底から揺るがす変化である。中国も、米国が近海で自由に行動できる状況を何としても引っ繰り返したい。双方が引けない状況下で、軍事衝突の可能性はゼロにはならない。
第1のシナリオ:海上での衝突
最も可能性が高いシナリオは、米海軍艦艇と中国海警局(海上保安庁に相当)巡視船との衝突である。2015年10月27日、「航行の自由」作戦の名の下に、南沙諸島(スプラトリー諸島)のスビ礁から12カイリ(約22キロメートル)以内の海域に進入した米海軍艦艇に対して、中国は海軍艦艇2隻による追尾、監視および警告を行った。
12カイリ以内の海域への進入が1回だけであれば、中国指導部も「中国海軍艦艇が米海軍艦艇を追尾、監視し、米海軍艦艇は、中国海軍艦艇の警告に従って12カイリ外の海域に出た」と言える。しかし、これが繰り返されると、中国国内から「指導部は、米海軍の行動に対して何の手も打てない」という批判が起こることになる。
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