文化史研究者、文筆家 辻田真佐憲氏に聞く 『ふしぎな君が代』を書いた

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議論の絶えない国歌「君が代」。近代日本を背負った140年余のその生命力に迫る。

ふしぎな君が代 (幻冬舎新書)
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──政治と芸術の視点から「君が代」の歴史をひもとくと、新しい理解ができるのですか。

合意が取れていない議論を延々と繰り返すのはあまりに不毛だ。なぜ問題になるのか。一言で言えばこの歌は近代日本そのものなのだ。1869(明治2)年に誕生して、今まで国歌であり続けている。近代日本のいいところも悪いところも象徴している。まず政治と芸術の視点から、知られざる歴史に迫ったらどうか。

──誕生秘話にも定説がありませんね。

明治早々、英国王子の来日で急きょ国歌が必要になる。急場しのぎで、『古今和歌集』の読み人知らずの短歌に鹿児島で愛唱されていた「蓬莱山」の節をつけて間に合わせたというのが、維新の元勲、大山巌の回想を基にした有力説だが、真説とは断定しにくい。

──探究すると説は八つに及ぶとか。

ここ20年、近代音楽史の研究は進み、「君が代」の論文も最新の研究がいくつか出ている。国歌がこんなに問題になるとは思っていないので、誕生にまつわる資料は皆無だ。昭和になってから伝聞が記述され残っている。誰が歌詞を選んだかは特定できないが、明治政府の誰かが選んだ。それを英国人が作曲し、日本語で歌えるように雅楽の若き専門家の奥好義(よし いさ)らが改訂し、ドイツ人が五線譜に直して1880年に今の「君が代」ができたことはわかっている。

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