危機回避と物価安定が両立できないおそれ
評者 BNPパリバ証券 経済調査本部長 河野龍太郎
アベノミクスの大誤算は、大幅円安にもかかわらず、輸出が増えなかったことだ。一方で輸入物価は上昇し、消費増税でダメージを被った家計に追い討ちをかけた。後遺症は今も続く。
大規模な2012年度補正予算の効果で、14年年初には完全雇用に達していたため、もし円安誘導で輸出が増加すれば、人手不足に直面する非製造業の雇用を奪うおそれもあった。これらの理由から評者は近年の円安誘導には否定的だが、本書はより長期的視点から、リフレ政策の問題点をあぶり出す。デフレを諸悪の根源としたため、喫緊の課題である人口問題への対応策がおろそかになったと嘆く。全く同感だ。
生産年齢人口の減少が潜在成長率を低下させる点は多くの人が認識するが、問題はそれだけではない。85歳以上の超高齢者が激増する30年代以降、要介護者が急増し、介護離職で労働力の一段の減少が懸念される。簡単な試算で、さらに1割を超える労働者が介護に割り当てられ、潜在成長率が一段と低下するリスクを説得的に示す。
この記事は有料会員限定です。
東洋経済オンライン有料会員にご登録頂くと、週刊東洋経済のバックナンバーやオリジナル記事などが読み放題でご利用頂けます。
- 週刊東洋経済のバックナンバー(PDF版)約1,000冊が読み放題
- 東洋経済のオリジナル記事1,000本以上が読み放題
- おすすめ情報をメルマガでお届け
- 限定セミナーにご招待