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『なぜ日本企業は強みを捨てるのか』 『「衝動」に支配される世界』『猪変』など

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なぜ日本企業は強みを捨てるのか
なぜ日本企業は強みを捨てるのか(日本経済新聞出版/288ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。
こいけ・かずお●法政大学名誉教授。1932年生まれ。東京大学教養学部卒業、東大大学院経済学研究科博士課程修了。法大助教授、名古屋大学教授、京都大学経済研究所所長、法大教授、東海学園大学教授、法大大学院教授などを歴任。著書に『強い現場の誕生』など。

さげすんではいけない 人的資本の蓄積重視

評者 BNPパリバ証券経済調査本部長 河野龍太郎

資本市場からの強い規律が働き、日本企業は筋肉質になったとほめられる。しかし、本当に効率的になったのか。付加価値の源泉はイノベーションにあるが、それを生み出すには高度な人材が必要で、その形成には長い時間を要する。短期重視で利益最大化を求める株主からのプレッシャーが強まった結果、人的資本の蓄積を重視する経営がさげすまれてはいないか。

労働経済学の碩学が、警鐘を鳴らす。得意としてきた現場での聞き取りが高齢のため困難になっているとして、本書では多数の文献を基に分析するが、小池節はなお健在だ。

製造業の海外進出が著しい中で、評者がずっと疑問に思っていたのは、生産工程を移転する際のコストだ。如何に優れた生産ラインを本国で持っていても、安全規制や労働慣行、商慣習が異なる海外に移植するのは容易ではない。場合によっては、新製品の開発以上の労力を要する。本書の分析では、生産工程の再構築の能力がものを言うことが示される。労働力減少時代に入り、生産拠点の海外移転が当然になった現在、これこそが付加価値の源泉にほかならない。

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