2013年8月、場所はニューヨークのバスケットボールシティ──。米国を代表するヒップホップシンガー、エミネムのライブが行われていた。薄暗い会場いっぱいに詰めかけた観客は大熱狂。一見すると普通のライブだが特徴が一つある。観客がつけている時計の大多数が「Gショック」なのだ。
これはカシオ計算機の腕時計、Gショックのプロモーションイベント「ショック・ザ・ワールド2013」のワンシーン。発売30周年のこの年、Gショックファンのエミネムを招いたシークレットライブだ。
今、エミネムのライブに負けないほど、カシオの業績も熱を帯びている。15年3月期の純利益は前期比1.6倍の265億円と、8年ぶりに最高益を更新する見通しだ。
復活に向けた転換点はアナログへのシフト
一時、大赤字に陥ったカメラ事業が黒字転換するなど主力事業は軒並み前年を上回っているが、快進撃の原動力はなんといってもGショックの躍進だ。08年度に250万本だった出荷本数は増加の一途をたどり、14年度には3倍増となる720万本まで伸びる計画だ(図表1)。絶好調を受け、今年8月には山形工場の高級時計ラインを6割増強する。
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