日本テレビが聖域にメス、賃金3割カットを強行 新賃金制度を巡り、高まる労使の緊張感
日テレが強行策に踏み切った背景にあるのは、業績の低迷だ。企業からのテレビ広告出稿が減る中、単体収益は10年以上右肩下がり傾向が続いており、01年3月期に631億円あった営業利益は10年3月期に222億円まで縮小。足元の視聴率は好調で、業績も小幅ながら回復の兆しが見られるものの、今後大きく伸びる見通しは立てにくい。
対して労組は「3年間の激変緩和措置があったとしても、会社側の説明は不誠実。人件費を削減しないと、会社が本当に立ち行かないのか」(労組幹部)と疑問を投げかける。東京都労働委員会に斡旋を申し立て、年末までの団交再開を要求している。一方、日テレ幹部は「地方局では3年間で35%人件費を落とした局もある。それでも年収は県庁役員と同じぐらい高い。商品力は落ちない」と強気な姿勢を崩さない。事態に進展がなければ、労組側は不当労働行為などで提訴することを視野に入れている。
TBSでも大ナタ
人件費に大ナタを振るっているのは日テレだけではない。視聴率4位に低迷するTBSホールディングスは民放他局に先駆けて04年に分社化し、09年に持ち株会社に移行。本体よりも賃金水準が2割低い子会社・TBSテレビへの転籍を進めており、管理職以上は今期までに終了した。今後労組との交渉に突入するが、対立激化は避けられそうにない。フジテレビジョンも、制作現場から「年間4回以上あった特別手当が2回に減り、年収が1割減った」との声が漏れる。
ただ、テレビ局の平均年収はフジ(1452万円)、日テレ(1262万円)、TBS(1357万円)など、高いのも事実だ。免許事業ゆえに参入障壁が高く、高収益を築いてこられたが、今やインターネットなど新興勢力の台頭で本業はジリ貧状態。日テレの氏家齊一郎会長はかねてから「広告減少が続く中では生き残れるキー局は2~3社」と指摘している。テレビ局を囲む環境が今後一段と厳しさを増すのは間違いない。
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(冨岡 耕 撮影:尾形文繁=週刊東洋経済2010年12月4日号)
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