少子化社会ではむしろ職場の喪失こそ問題に--『5年後の日本と世界』を書いた田中直毅氏(国際公共政策研究センタ−理事長)に聞く
──5年後は、団塊の世代がことごとく年金受給資格を手にしています。
5年後は2015年だが、今からでも遅くない。日本という国のあり方を原点に戻ってしっかり考えないといけない。
すでに10年度予算は、政策経費に充てられる一般歳出のうち53%がいわゆる福祉予算になった。5割を超えたのは初めてだ。財政の緊縮は10年前までなら、いちばんに公共事業が挙げられたのも納得がいく。今は緊縮が必要だとなれば、年金、医療、介護、生活保護、失業者支援、こういったところに目を向けざるをえない。しかも、納得ずくで自助、共助、公助の線引きを明らかにすることがないかぎり、財政緊縮はできない状況にある。その状況が15年にかけてさらにきつくなる。
──消費税増税で賄えばいいという議論があります。
増税はもちろん必要だが、消費税率を10%に引き上げたとしても、それで財政バランスが取れるかどうか、そう話は簡単ではない。この20年の国民の所得の推移を20%ずつで区切る5分位から見ると、どの分位も下方に金額がシフトしている。つまり等しく貧しくなった。この実態から、年収300万円に満たない家計において10%への消費税増税が円滑にできるかどうかとなると、そうとう難しい。給付つき税額控除などを入れざるをえない。
──給付つきには国民共通番号が必要になりませんか。
そういう点でも、柔軟な租税政策のために国民共通番号制度は欠かせない。この制度を通じて政策インフラが大きく改善できる。財政、特に福祉の支出を含めて、増税を可能にする環境作りにならなくてはならない。歳入ばかりでなく、歳出における合理化、健全化、透明化を進めるうえでも不可欠な制度だ。