藤田晋、羽生善治に学んだ「若者の話を聞く」真髄 若者の声を聞かないと、人も企業も成長しない

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「心を鍛える」という本書のテーマにもぴったりなので、とくに私の心に残っているメッセージをお伝えしようと思います。

2006年の対談では、「年齢が上がるほど、精神力やメンタル的な部分は上がる」とおっしゃっていたのが印象的でした。ビジネスの世界でも同じことが言えます。年齢を重ね、経験を積むことで戦い方も変わっていきます。

私自身について言うと、さまざまなことを経験したことで、自分自身がブレないようになり、本当にリラックスして仕事に取り組めるようになってきたのは、40代になってからだと思います。40代以降は、これまでの実績が評価されるようになって、自分の思い通りに仕事を進められるケースが増えました。

でも、だからといって自信過剰になってはいけませんし、謙虚な気持ちがなければ足をすくわれます。また、新しいアイデアは若い人が生み出しますから、それをきちんとキャッチできる度量がなければ、事業はいつの間にか錆びついてしまいます。

藤井聡太氏に羽生善治氏は…

また、2017年の対談では、次のようなことをお話しされました。

「将棋の世界は、とても幅広い世代と交流が持てます。藤井聡太さんは21世紀生まれ。一方で、過去には明治生まれの人と対戦したこともあります。明治から平成、21世紀の人まで、1つの盤を囲んで対局できるのは将棋の魅力かもしれません。また、それだけ幅広い世代の人間が集まるにもかかわらず、年功序列という概念がないので、結果次第で自分のポジションが決まります。たとえば、私が最初にタイトルを取ったときは19歳、席次で言うと60位くらいでした。それが突然1番、2番に躍り出たり、また負けると元に戻ったりとダイナミックなので飽きません」

この話は、「若い人が頭角を現しにくい一般的な企業」を見慣れている私にとって、大きな刺激を与えてくれました。羽生さんは、続けておっしゃいました。

「将棋の世界では、本当に画期的な作戦やアイデアは10代後半や20代前半の人たちから出ることが多いんです。だから、私自身もそういう若い人と対戦するのは、すごく楽しみです。実際に棋譜を調べるときも、まだ段位は低いけど、すごく内容の良いものを指している人はいて、そういう棋譜はよく見たりしています」

将棋の世界では、2016年に14歳2カ月でプロ入り史上最年少記録を塗り替えた藤井聡太さんのような若手が台頭していますが、羽生さんもベテランの強みに加え、若い人からも良いものを吸収しているのです。

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