東京海上が先陣切る自動車保険手続きの「無人化」 将来的には保険金支払いまで「最短30分」目指す

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保険金支払いの自動化システムの導入は欧米の損保会社が先行している。2018年に東京海上日動の親会社である東京海上ホールディングスが出資・業務提携したアメリカの自動車保険会社「メトロマイル」はその代表格だ。メトロマイルはデータ分析技術やAI(人工知能)を駆使し、自動車事故の受け付けから保険金支払いまでを完全自動化している。

東京海上日動の今回のシステムでも、事故のWeb受付やAIを活用した不正請求の検知などについて、メトロマイルの技術やノウハウを取り入れている。また、2022年11月には、東京海上グループ内で開発したAIを使って約260万件の自動車事故を、事故の形態や難易度ごとに振り分ける技術も導入する方針だ。

さらに2023年度中には、自動化の対象を、複雑な示談交渉が必要ない単独事故の約8割に当たる約30万件に広げるとともに、傷害保険と火災保険の一部の対応も自動化させることを計画している。

契約者に受け入れられるか

ただ、保険金請求の自動化システムが契約者にどこまで受け入れられるかは未知数な面もある。

ネットやスマホがある環境で育ったデジタルネイティブに対しては、手続きの完全自動化は親和性が高く、訴求力が強い。だが、国内の損害保険会社の損害サービス(事故対応や保険金請求手続き)は、これまで人による対応が通例だった。

ネットで保険加入手続きができるダイレクト系損保会社であっても、事故対応は人が介在するのが一般的だ。契約者側からしても、保険金の請求手続きは馴染みがなく、「人による丁寧で温かみのある対応」を望む声は多い。

東京海上日動は2月からの稼働に当たり、「保険金の請求を初めて行う契約者」を想定してシステムを構築。特にスマホの表示画面や操作方法などUI(ユーザーインターフェース)にこだわったという。

「『自動化対応は冷たい』などの印象を持たれないように、保険金請求の手順を説明したわかりやすい動画をスマホから視聴できるようにした。また、自動化対応はあくまで任意であり、契約者が人による対応を望めば、すぐに切り替えられる仕組みにしている」(小林氏)という。

損害保険業界で前例がない完全自動化対応が浸透するか。その鍵は、人を介したサービスを上回る「顧客体験(CX)」を同社が提供できるかにかかっている。

高見 和也 東洋経済 記者

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たかみ かずや / Kazuya Takami

大阪府出身。週刊東洋経済編集部を経て現職。2019~20年「週刊東洋経済別冊 生保・損保特集号」編集長。

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