鴻巣市の教員が「働きやすくなった」と喜ぶフルクラウド化の恩恵 いつでもどこでも学び働ける教育ICT環境を整備

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SINETの活用を推した同市教育委員会教育総務課主任の新井亮裕氏は、「フルクラウド化には強固なセキュリティーの担保が不可欠。セキュアにクラウドを利用しやすい点がSINETの優れているところです」と話す。

具体的には、SINETに直結するクラウドサービス(Microsoft Azure)を活用し、統合型校務支援システム、勤怠管理システム、採点支援システムなどを構築。「クラウド環境にふさわしいセキュリティー技術としてゼロトラスト(※3)ネットワークも実現しています」と新井氏は説明する。

※3 「すべてを信頼しない」を前提に対策するセキュリティーの考え方

インターネット接続もSINET経由で行うため、市独自の閉域網を新たに構築。各拠点からのアクセスはいったんこの閉域網に集約し、そこからSINETに接続する仕組みにした。

授業で利用する学習コンテンツはすべてSaaS(※4)に切り替え、子どもたちがWi-Fi経由でアクセスし、家でもドリル学習をしたり百科事典を読んだりできるようにした。

※4 Software as a Service。ベンダーが提供するクラウドサーバーにあるソフトウェアを、インターネット経由で利用できるサービス

教職員には閉域網にアクセスできる専用SIMを搭載したモバイルルーターを1人1台配布。これで各自のパソコンでテレワークが可能になり、個人情報を含む成績処理などの作業も自宅でできるようになった。

80時間以上の超過勤務者がゼロになった訳

「子どもも先生も、パソコンを文房具のように使う基盤が整ったと思います」と、新井氏。では実際、教育現場の評価はどうか。試験運用にも参加した鴻巣市立鴻巣中央小学校校長の清水励氏は、こう語る。

「子どもたちが、自分の考えをいろんな人に伝えたり、逆にほかの人の考えを知ったりすることができるツールを得られたことで、授業に取り組む姿勢がより積極的になったと感じています。休み時間に折り紙の折り方を動画で見ながら友達と作るなど、授業以外でも知りたいことがあればすぐに調べていますね。今後はパソコンを活用していわゆる反転学習も取り入れます。家庭学習では予習や意見のまとめをやってきてもらい、授業は学び合いやアウトプットの時間にできたらと思います」

鴻巣市立鴻巣中央小学校3年生の国語では、協働学習用アプリを使ってお互いの意見を可視化

教員にも変化が表れた。パソコンが苦手なベテラン教員には、若手が使い方を教えている。「ベテラン教員は授業力があるので、使い方がわかるとすばらしい活用の仕方をする」(清水氏)そうで、今度はそのノウハウを若手の教員に教えるという好循環が生まれてきたという。

鴻巣市立鴻巣中央小学校の職員研修の様子。ICT機器の活用が日常に

また、同校では21年9月以降、80時間以上の超過勤務者がゼロになった。

「Microsoft Teamsによるチャット連絡の定着やペーパーレス化の進展などで業務が効率化し、ミスも減りました。さらに月途中での超過勤務時間の確認が新たな勤怠管理システムで可能になったことで、効率よく仕事を終わらせて早く帰ろうという意識改革が促進された。こうした変化の結果であると思っています」(清水氏)

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