鴻巣市の教員が「働きやすくなった」と喜ぶフルクラウド化の恩恵 いつでもどこでも学び働ける教育ICT環境を整備
しかし、フルクラウド化は手段であって目的ではないと、新井氏は強調する。教育ICT基盤の整備を考える自治体にはこう助言する。

鴻巣市教育委員会 教育総務課主任
民間企業等を経験後、2014年に鴻巣市役所入庁。情報政策部門を経て、17年4月より現職。「鴻巣市学校教育情報化推進計画」の策定や教育情報基盤の刷新等、教育情報化推進の業務などを担当
「まずは実現したいことを明確にすること。その手段がフルクラウド化ならば、メリットや回線の問題、ゼロトラストの考え方などもしっかり理解すること。そうでないと、ベンダーと一緒によいクラウド環境を構築することもトラブル時の交渉などもできません」
文科省はEBPM(※5)を推進しており、同市も多くの校務や学習活動がデジタルシフトすることで、GIGAスクール構想の本丸である「教育データの活用」が見えてくる。
※5 Evidence Based Policy Making、客観的な根拠を重視した教育
「優れた教職員の経験や勘、指導技術を言語化・可視化・定量化し、そこにOODA(※6)ループを活用すれば、変化に柔軟かつ迅速な意思決定が行え、教育の質の向上に寄与できます。これこそがフルクラウド化を整備したメリットで、本市の強みになると考えており、今後は科学的な教育を推し進められたらと思います」(新井氏)
※6 Observe(観察)、Orient(状況判断)、Decide(意思決定)、Act(行動)
課題は、デジタル教科書だという。文科省は24年度に本格導入を目指しているが、利活用の詳細は議論中だ。日常的なトラフィックが増加する中でデジタル教科書が導入された場合、「回線の問題が出てくる可能性は高い。その際、設備投資が追いつかない懸念があります」と、齊藤氏。「今後はクラウド環境ではなく、エッジコンピューティング(※7)を活用する環境が必要になるかもしれない」と、新井氏も先を読む。
※7 ユーザーや端末の近くにサーバーを分散配置し、高速かつリアルタイムにデータ処理を行う技術
待ったなしの教育のICT化。自治体ごとにその計画は変わるだろうが、同市の事例に見る明確なビジョンや変化への柔軟性、垣根を越えた連携は、重要なポイントになるに違いない。
(文:田中弘美、写真:鴻巣市教育委員会提供)
東洋経済education × ICT編集部
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