産業天気図(石油・石炭製品) OPEC減産で原油高に、増益・減益組に分かれる
石油業界の今期業績は厳しい。まず原油高の影響がある。春先のイラク戦争終結後、4月には1バレル23ドル強(東京市場・中東産ドバイ・スポット価格)だったが、8月の27ドル台をピークにジリジリ下落。9月中旬には24ドル台まで下がっていた。
しかし、このまま歯止めがかからないと見られていた矢先の9月24日、イラクの増産を警戒していたOPECが大方の予想を裏切り、臨時総会で11月以降の減産を急遽決定。再び25ドル台へと乗せた。それでもイラクの生産回復が思ったより早い場合、OPECは今後、追加増産の可能性もでてくる。
日本の元売り会社にとっても、原油価格の上昇はむろん痛い。原油高をガソリンや灯油などの製品に転嫁するにせよ、どうしても数カ月のタイムラグが生じてしまうからだ。一方で、ガソリンスタンド(SS)での価格競争は厳しゆえ、そう簡単には卸価格に転嫁しづらい。各社ともに精製コスト削減に取り組み、マージン拡大にいそしんでいるものの、具体的な数字となって反映するには時間がかかる。
今期は前期末の高値在庫を引き取ってのスタートだけに、原価上昇が響くのが当初からわかっている。後入れ先出し法を採用する出光興産に比べれば、総平均法を採る新日本石油などはまだ少ないとはいえ、原油高のデメリットは無視できない。さらに前下期からは東京電力向けに、原子力発電所停止に伴う火力発電のフル稼働で、重油の“特需”が発生していたが、これも今上期中には薄れてしまう。一般的に、ガソリンや軽油は年間を通じて産業需要や旅行需要に左右され、灯油などは気温にかなり依存する。今夏は冷夏だったが、この冬が厳冬なら追い風、暖冬なら逆風となるため、下期は天候も大きな要素だ。
個別企業で見ると、新日石や昭和シェル石油は減益見通しである。特に新日石では、子会社によるデータ改ざん不祥事を受けた2製油所の停止で、減益幅が拡大する見通しだ。昭シェルも増額ながら、減益幅縮小にとどまる。また非上場の出光興産は製油所火災が響き、増益予想の下方修正は避けられそうにない。
ただし一方で、コスモ石油や東燃ゼネラル石油は、コスト削減効果が効き増益の見通し。また新日鉱ホールディングスも、石油部門は不調ながら電子材料部門が黒字化し、収益は好転しそう。天然ガスが好調なかつてのような帝国石油も、減益予想から増益に転換する1社。石油産業もかつてのような業界一律ではなく、好調組・不調組に分かれる、まだら模様の決算発表となりそうだ。
【大野和幸記者】
(株)東洋経済新報社 電子メディア編集部
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