『絶倫食』を書いた小泉武夫氏(食文化論者、発酵学者)に聞く--イチジクとスルメを一緒に食してはどうか

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--チンギス・ハーンからジョセフィーヌ皇后まで登場します。

昔からいわれているものは、ほとんど科学的に根拠がある。たとえばにんにくが効くといわれ、それはタマネギと同じ独特なにおいがする。あれはイオウ系の化合物、アリチアミンのにおい。このにんにくの活力源の成分は薬品のアリナミンと同じで、アリチアミンが筋肉の疲れをとると同時に筋肉を活性化する。

ちなみに、エジプトのピラミッドを造った作業員は、タマネギをかじり、にんにくをかじりながら、あそこまで偉大な建造物を造ったと文献に出ている。

--確かに菜食主義者でも強健な人がいます。

ベジタリアンが食べる野菜にも、精をつけるものがいっぱいある。野菜スープが甘くおいしいとすれば、あれは多糖類によるもの。野菜にはアミノ酸も多い。好例はたけのこだ。たけのこを煮付けて、しばらくすると白い粉がふく。それはアミノ酸。噴出するぐらいある。植物では力が出ないように思うが、そんなことはない。

--スルメとイチジクの効能にも驚きです。

空腹のときにスルメを食べてお酒をちょっと飲む。スルメの成分が酒に溶け、てきめんに効く。スルメにはバレニン、タウリンといったアミノ酸が豊富だ。

イチジクもすごい効き方だ。イスラム教徒が大事にし、ドライフルーツにして世界各国で売られているのも合点がいく。イチジクとスルメを一緒に食してはいかがか。

ただし、絶倫食といっても、半分は人の心に対して言い聞かせるところがある。鼻に訴えるのも大切だ。においは、江戸の好事家が好んで尊重した。

(聞き手:塚田紀史 撮影:梅谷秀司 =週刊東洋経済2010年9月25日号)

こいずみ・たけお
東京農業大学名誉教授。鹿児島大学、琉球大学、広島大学、別府大学で客員教授。醸造学者、作家、エッセイスト、冒険家、発明家の顔も併せて持つ。1943年福島県の酒造家に生まれる。長年、東京農業大学で教鞭を執るかたわら、学術調査を兼ねて世界各国を訪れ、奇食珍食に挑戦してきた。

『絶倫食』 新潮社 1365円 201ページ

  

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