乙女の密告 赤染晶子著

乙女の密告 赤染晶子著

『アンネの日記』を主題に乙女と呼ばれるドイツ語を履修する学生たちと、人形を溺愛する変なドイツ人教授の物語。スピーチコンテストの準備に翻弄される乙女たちと、おかしくも真剣な教授とのやり取りを軸に、テンポよくコミカルに話は進む。乙女のリーダーが教授との仲を疑われる事件が発生し、誰が密告したのかをめぐって状況は深刻化し始めるが、これがアンネ・フランクを誰がドイツ軍に密告したのかという歴史的事実と重なり合う。

乙女たちの中に密告者がいるのは確かだが、真相を求めての意外な展開の裏に自己と他者という哲学的な問題提起があり、乙女たち同様、『日記』の重要箇所に再三、立ち戻ることを読者は要求されるだろう。問われる問題の重さと軽妙な文章が不思議なバランスを保った、異色の芥川賞受賞作。祖国という問題はアンネの世界では重く広がるが、乙女たちの世界ではどうか。さまざまに思いを馳せることのできる作品だ。(純)

新潮社1260円

  

ライフの人気記事
トピックボードAD
関連記事
  • 埼玉のナゾ
  • Amazon週間ビジネス・経済書ランキング
  • ミセス・パンプキンの人生相談室
  • 「非会社員」の知られざる稼ぎ方
トレンドライブラリーAD
  • コメント
  • facebook
-

コメント投稿に関する規則(ガイドライン)を遵守し、内容に責任をもってご投稿ください。

ログインしてコメントを書く(400文字以内)
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
介護大全<br>お金、仕組み、施設を全検証

突然、訪れる親の介護にどう向き合えばよいか。3640人へのアンケートによる経験者の声を基に、介護の悩みや不安の解消策を考える。介護保険サービス利用の全容、4つのケースで試算した介護費用、老後の住まい徹底比較など、具体例を満載。