このマンガでは、どうしようもない理不尽に対して懸命に戦って、必死に食らいつく人たちの姿があります。誰も彼もが将棋で報われるわけではありません。でも、何か努力を繰り返しているときに、得られるものが、見える世界がある。報われないかもしれないけれど、確かに救いはある。理不尽で、ほかの人から見たら愚かな努力に見えるかもしれないけど、意味はある。そういうことを教えてくれるのがこのマンガなのです。
頑張れない若者って増えていますよね。僕もそっち側だったので、すごくよくわかります。でもこのマンガを読むと、ちょっとだけ「努力するのも悪くない」「報われないかもしれないけれど、頑張ってみようかな」と思えるようになるのです。
戦国時代から江戸時代を描いた読み応えたっぷりの歴史マンガ
最後は、『へうげもの』(講談社 モーニングKC)です。

このマンガは古田織部という戦国武将の目から見る戦国時代〜江戸時代の流れを追ったものです。織田信長、豊臣秀吉、千利休、徳川家康……いろんな人物が、コミカルかつ魅力満載に描かれています。これだけ面白いうえに、この時代に、なぜ「茶の湯」が流行したのか、「文化」というものはどのようにつくられていくのかということもわかります。こんな読み応えたっぷりな歴史マンガも珍しいでしょう。
ところで、こういうマンガを紹介すると、「史実に合っているのか」を気にされる方も結構いらっしゃるかと思います。先に言っておきますが、このマンガはギリギリ史実で描かれていないところを、めちゃくちゃな解釈をして描いています。千利休は大柄だったというのは史実どおりなのですが、並の武士が束になってもかなわないくらいムキムキでめちゃくちゃ強いという設定になっています。
それでいいのか!?と思うかもしれませんが、それでいいんだと思います。脚色されている部分もあるかもしれないし、「それはないよ」と思ってしまうかもしれませんが、でもそれを楽しめるようになると、歴史もきっと楽しめるようになります。
いかがでしたか? これらのマンガは僕にとって、自信を持ってお薦めできるものです。ぜひ皆さんも「マンガだから」と敬遠するのではなく、「マンガだからこそ」と思って読んでもらえれば幸いです。
(注記のない写真:Graphs / PIXTA)
執筆:西岡壱誠
制作:東洋経済education × ICT編集チーム
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