主人公は、身体的な特徴から村で差別を受けている少年。本が大好きな彼が、本の都にある図書館の司書と出会い、人生を切り開いていくファンタジーです。もちろんストーリーも面白いのですが、この漫画には「本の歴史」「本の魅力」「本との出合い方」などなど、読書教育のヒントが満載。「人はなぜ本を読むのか」「何のために読むのか」について改めて考えさせられる作品です。
口頭で限定的に語り継がれていたことが本という形になって誰もが読めるようになったすばらしさ、あるいは、読むことで楽しさが広がったり苦しさから解放されたりすることもある本ならではの魅力などが、主人公の体験や司書の姿を通じて生き生きと感じることができます。また、本を本棚から取り出すとき、指で引っかけて取ると背表紙を傷めてしまうといった、見落としがちな「本の扱い方」などが学べる点もいいなと思っています。
僕は前述の「作家の時間」とともに「読書家の時間」(関連記事)というワークショップも授業に取り入れています。これは「読みたい本を自分で選び、読みたい場所で読みたいように読む」という活動を通して「読書家」の育成を目指す実践ですが、要は日頃から読書教育に力を入れているわけです。だから、同じく読書教育に興味のある先生や本が好きな先生には、この漫画の深さがわかっていただけるのではないかと思います。
でも、僕としてはすべての先生方に読んでいただきたい! もっと言うと、大人になった今も読書の面白さがわからない大人にこそ読んでほしいし、子どもにも読んでほしい。とくに僕は大人になって読書の楽しさに目覚めたからそう思うのかもしれませんが、もし学級文庫に漫画が認められるなら、絶対にこの作品を置きますね。読んだ先生はきっと教室に置きたくなる、そんなすてきな漫画です。
今回ご紹介した3作品、もしよかったら参考にしてみてください。それでは皆さん、楽しい冬休みを!

1978年生まれ、北海道出身。東京都の公立小学校教員として14年間勤務。2016年、主に病気休職の教員の代わりに担任を務める「フリーランスティーチャー」となる。これまで公立・私立合わせて延べ11校で講師を務める。NPO法人「Growmate」理事としてマーシャル諸島で私設図書館建設にも携わる。近著に『マンガでわかる!小学校の学級経営 クラスにわくわくがあふれるアイデア60』(明治図書)
(写真:田中氏提供)
(注記のない写真はiStock)
制作:東洋経済education × ICT編集チーム
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