東海道新幹線の雑誌「ウェッジ」、誌面作りの内側 発行10万部、グリーン車からの「持ち帰り率」が鍵
――発行部数は?
約10万部。その7割程度がグリーン車に配布され、残りは車内や駅売店や書店での販売や定期購読が占めている。
――売れた号、売れなかった号はどうやって判別するのですか。
グリーン車に置いてある『ウェッジ』には「ご自由にお持ち帰りください」と記載しているので、どれだけ持ち帰りいただけたかが1つの指標になる。号によって違うが、持ち帰るお客様は約60%いる。「いつもポケットに搭載されているので、持ち去られていないんじゃないか?」と思う方もいらっしゃるかもしれないが、持ち帰られたら、しっかり補充している。
――話題になった号はありますか。
私が編集長になって以降で言えば、2020年10月号「新型コロナ こうすれば共存できる」は、それまで世間ではコロナは怖いというトーンで報道されてきたが、この特集では「コロナとうまく共存していく社会をめざしていこうじゃないか」というメッセージを他誌に先駆けて伝えることができたと自負している。今もそのスタンスに変わりはない。特集の反響も大きくて、筆者や取材先の方々からも「ほかの雑誌とは違うね」という反応が返ってくるようになった。
鉄道記事はやらない?
――『週刊東洋経済』や『週刊ダイヤモンド』といった経済誌のコロナ特集と比べると何が違うのですか。
時流におもねらずに言うべきことを言う。たとえば、ランキングものは一切やらない。
――特集にランキングを入れると売れますからね(笑)。
発行部数の大半を親会社のJR東海がグリーン車サービスの一環として購入していることが1つの強みだと思う。いろんなことにチャレンジできるので、ありがたい環境だ。
――でも、JR東海から編集方針について注文がつくことはありませんか。
まったくない。我々が責任を持って編集している。編集にあたっては、公益の視点を重視している。今の環境に胡坐をかくことなく、しっかりとしたものを作っていきたい。
――鉄道の記事はまったくありませんね。編集会議の議題にも上らないのですか。
上らないですね。「鉄道トリビアなど、やればいいのに」とはよく言われるが、雑誌の性格が違いすぎるし、東洋経済オンラインさんの企画力にはかないません(笑)。ただ、2021年4月号の「『一帯一路』大解剖」では中国の一帯一路によるラオスやカザフスタン、ケニアなどの鉄道は「うまくいっているの?」という視点を取り上げた。弊誌で鉄道を取り上げる場合は、こうしたテーマになる。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら