デルタ株「20〜30代」が短期間で重症化する実態 ワクチン未接種層の感染拡大が深刻なアメリカ

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デルタ株をめぐってはこのところ、科学者の想定を裏切る不穏なデータが次々と浮上。毒性や重症化リスクの解明が切迫した課題になっている。

ニューヨーク・タイムズが7月下旬に入手したCDCの内部文書には、デルタ株は水ぼうそう並みの感染力を持ち、「(イギリスで最初に特定された)アルファ株などの従来株よりも深刻な症状を引き起こす可能性がある」と記されていた。

CDCによると、今年1月末時点では入院患者の半分は65歳以上で、50歳未満の大人は22%という構成だった。しかし今では、高齢者の割合が25%を少し上回る程度なのに対し、18〜49歳は41%を占めるようになっている。

アーカンソー医科大学のキャム・パターソン学長は、冬に同大学の医療センターに入院した患者の平均年齢は60歳だったが、今では40歳になっていると話す。「デルタ株は従来株よりも、より若くて健康な人に感染しやすいのではないかと感じている」。

同大学の病院でデルタ株による感染が最初に確認されたのは5月1日だったが、6月17日までにはほぼすべての感染がデルタ株によるものとなった。「若い患者が増え、病状の悪化スピードが上がっていったのと、アーカンソー州でデルタ株が広まった時期は完全に一致する」とパターソン氏。「私たちにしてみれば、まったく違った病気が現れたような感覚だ」。

健康な30代が数日で集中治療室行き

フロリダ州ジャクソンビルでジムを経営するボディビルダーのドナルド・マカヴォイさん(33)は、面倒なのでワクチンを接種せずにいた。ウイルスにやられるのは健康に問題のある高齢者だけと考えていたからだ。

ところが、6月下旬に鼻水の症状があった。本人は風邪かアレルギーだろうと高をくくっていたが、交際している女性にきつく言われて検査を受けると陽性だった。マカヴォイさんは血中酸素濃度を測るパルスオキシメーターという小さな機器を渡されて、自宅療養に入った。

数日とたたないうちに症状は急激に悪化。マカヴォイさんが寝室の床に崩れ落ちたとき、血中酸素濃度は56%に落ちていた。正常値は95%以上だ。

バプテスト医療センターで酸素マスクを着けられ、集中治療室に送られた。そこで11日間を過ごしたマカヴォイさんは、このつらい体験を「肉体面だけでなく精神面でも、今までに経験した中で最もおそろしいものだった」と話している。医師からは、デルタ株に感染したと聞かされていた。

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