ヨーロッパに「夜行列車黄金時代」はやってくるか 衰退一転し復活の動き続々、新規参入会社も

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もう1つはベルギーに拠点を置く「ムーンライト・エクスプレス」で、同じく2022年4月にブリュッセル―リエージュ―ベルリンを結ぶ夜行列車を計画している。2020年に設立された同社は「magical travel experiences with the night train(夜行列車での魔法の旅体験)」を合言葉に、自社で用意したスタッフを乗務させ、運行パートナーとなる企業と準備を進めている段階とのことだ。

創業者のルイ・デ・イェーガー氏は、「AからBへ移動するために、単にスピードや価格だけで勝負するのではなく、手頃な価格で質の高い、退屈しない移動時間を提供すること」に焦点を当てると話した。

また、週末や長期休暇で長距離を移動する際、とりわけ家族連れは自家用車や飛行機に代わる手段を探している、と主張している。長距離移動において、自家用車で快適に過ごせるのはせいぜい1日、あとは疲れてしまって楽しみは半減する、というのがその理由だ。そのため、家族旅行が夜行列車における最も重要なターゲット層であると述べている。

英仏間を結ぶ夜行列車計画も

こうした家族連れ層はこれまで飛行機を利用していたかもしれないが、一度夜行列車を体験すると、リピーターとして今後も利用する可能性が高くなるとも言われているそうだ。

マイカーを載せられる車運車を連結した夜行列車もある(筆者撮影)

この傾向は、実際スウェーデンのインフラ会社Trafikverketが行った調査でも明確に示されており、スウェーデンからヨーロッパへ計画されている夜行列車コンセプトに関し、21%の人が「とても魅力を感じる」と、41%の人が「非常に魅力を感じる」と回答したという。これからの時代は運転に疲れながら移動するのではなく、一晩寝て起きたら目的地、というのがトレンドになるというわけだ。

6月16日には、フランスを拠点にした新会社「ミッドナイト・トレインズ」が、パリを起点にヨーロッパ各都市との間を結ぶ夜行列車を計画していることが明らかになった。その中でも注目されるのが、パリとイギリス(スコットランド)のエジンバラを直接結ぶルートだ。欧州大陸とイギリスを結ぶ夜行サービスの計画はユーロトンネル開業前に頓挫したナイトスター以来で、実現するかが注目される。

このミッドナイト・トレインズのもう1つの特徴は、これまでの夜行列車と比較して、かなり高級路線になっていることで、座席や相部屋は設定されない。「見知らぬ人同士が部屋を共有する時代は終わった」と同社は語っている。

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