ヨーロッパに「夜行列車黄金時代」はやってくるか 衰退一転し復活の動き続々、新規参入会社も

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ナイトジェットが成功を収めたことで、夜行列車は2010年代前半までの衰退ムードから完全に抜け出し、再び脚光を浴びるようになった。また、スイス鉄道など複数の国の鉄道会社がパートナーとしてチケット販売や列車運行に携わるなど、ナイトジェットの運行に参加する形で協力する会社も徐々に増えてきた。これは、新たに自社で夜行列車運行に参入するよりも、すでに運行している会社にぶら下がるほうがリスクが少ないということも関係している。

ただ、国同士でつながりのある、いわゆる旧国鉄ならすでに運行している会社に乗っかる形で参入できるが、新参の民間企業はそうはいかない。大手鉄道会社がやらないなら、まったく新しい路線を開拓して一旗揚げよう、という民間会社もある。

夜行列車復権の一連の動きの中で、特に環境問題の急先鋒であったスウェーデンでは、フランス企業Transdev(トランスデヴ)の子会社Snälltåget(スネールトーグ)による夜行列車サービスの準備が進められている。同社はもともとベルリン―マルメ間でフェリー航送を利用した夜行列車を運行しており、「飛び恥」運動によって同区間の需要が飛躍的に伸びたことで、2020年からオーストリアとの間を結ぶ長距離夜行列車も計画していたが、コロナ禍によってまだ実現していない。

また、チェコの民間企業レギオジェットは、2020年の夏季休暇期間を中心にクロアチアのリエカまで夜行列車を運行、連日満員の大盛況だったことから、2021年からは同国のスプリトを行き先に加えて運行している。

2社が同時に新規運行計画を発表

こうした民間企業の躍進は、これから新たに参入しようという別の企業にも大きな勇気を与えたと言ってもいいだろう。そして2021年4月6日、2つのまったく別々の民間企業が、新たな夜行列車を運行するという計画を同時に発表したのだ。

1つはオランダに本拠地を置く「ヨーロピアン・スリーパー」だ。ベルギーのブリュッセルからアントワープ、オランダのロッテルダム、アムステルダム、ドイツのベルリン、ドレスデンを経由してチェコのプラハを結ぶというもので、計画では2022年4月の運行開始を予定している。

レギオジェットの列車。「ヨーロピアン・スリーパー」は同社の客車や乗務員で運行する予定だ(筆者撮影)

運行にあたってはレギオジェットと提携し、客車や乗務員は同社が提供する予定。牽引する機関車は、チェコ―ドイツ間をレギオジェット、ベルギー国内は同国鉄が用意するが、現時点でオランダ国内だけは調整中となっている。ヨーロピアン・スリーパーは、すでに他の区間への列車運行も視野に入れており、2022年12月の冬ダイヤ改正時には運行を開始できるよう準備を進めている。また、最終的には自社で車両を保有して運行する計画となっている。

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