日本の高校・大学に広がる「米ミネルバ式」思考法 リクルート提供、清泉女子大は再編集して導入

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こう話すのはリクルート ヒトラボの福田竹志氏だ。ヒトラボでは現在、学校向けと企業向けにミネルバのプラットフォームを活用した教育プログラムの導入を図っていくことを目指している。ただ現状においては、日本語でミネルバ式のアクティブラーニングを教えることができる人は少なく、まずはミネルバ式プログラムの講師になるための講座を日本語で提供することを目指しているという。

講座は90分×8コマで、主にミネルバ式授業の方法について学ぶものだ。学校なら先生、さらに企業ではマネジャーといったように、教える立場また人材を育てる立場にある人をターゲットに講座を展開していく。

その一方で、同社では先行的な取り組みとして、高校生向けカリキュラムを展開している。計4つのプログラムがあり、日本語で提供している「Strategic Learning and Growth」は1コマ90分×週2回の授業を、オンラインで約3カ月にわたって行うものだ。脳神経科学に基づいた認知プロセス、思考法、習慣化、自己コントロールなどを学習し、その実行を通じて効率的にゴールを達成する方法を習得する。昨年は、北海道にある札幌新陽高等学校の探究コース約50名の生徒が、このプログラムに挑戦している。

さらに、現状では英語での提供となるがコミュニケーションのスタイルを学び自己表現方法を習得する「Expressive Clarity」、論理的思考を学ぶ「Applied Critical and Creative Thinking」、コンピューターサイエンスの原理を利用して身近な問題解決法を学習する「Applied Algorithm Thinking」がある。いずれも、その目的は自分のあり方を見つめ直し、より主体的で自由に物事を考える力を身に付けることを主眼としている。

ここで誤解してほしくないのは、ミネルバの教育プログラムは、英語や数学といった個別科目を教えることではないということだ。あくまでその本質は「Habits of Mind and Foundational Concepts (HC)」つまり思考習慣と基礎概念を習得することにある。授業はフルオンラインの反転学習形式で、1人1台ノートパソコンが必要だ。

「高校生向けの授業では、例えば、“先延ばしする癖をなくすにはどうすればいいのか”をテーマにするなど、そのポイントは自分の行動の基本となる“OS”を鍛えることにあります。実際に学んだ生徒に感想を聞くと、ここで学んだことを将来使っていきたいと思った、という回答が約9割。ほかの生徒にも勧めたいと思った、という回答も約8割に達しています。

脳科学やメタ認知を学ぶなど内容的には高度なのですが、むしろ生徒たちは強い興味を示して積極的に学ぶようになります。決して学力の高い進学校の生徒でなくても、授業期間の3カ月で脳についてディベートできるようになるなど、生徒たちは目を見張るほど変わっていきます。現在、いくつかの学校や生徒の間で興味深い事例が生まれてきており、今後は教育委員会と組むなどして公立高校などにも事例を増やしていきたいと考えています」

そう語る福田氏は、ミネルバの教育プログラムの導入が、日本の教育の課題を解決するうえでも大きな可能性を秘めていると指摘する。

「先生が手を焼いていた生徒が、ミネルバの教育プログラムを3カ月ほど経験したことで大きく変わりました。それまで生徒が無気力のように見えたのは、ただ人前で発言することが苦手なだけだったことがわかったのです。その子はプログラムを通して能力を一気に開花させた。一律一斉に、ペーパーテストのみで評価されるのが教育ではない。もっと違う形の教育が日本でもできるはずです。ミネルバの魅力は、『学び方を学ぶというOS』を身に付けることにあり、そうすることでもっと自分が生きたい人生を生きられることを教えてくれるところにあるのです」

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