帝国陸軍 見果てぬ「防共回廊」 関岡英之著

帝国陸軍 見果てぬ「防共回廊」 関岡英之著

林銑十郎や板垣征四郎が構想した「満州・モンゴル・ウィグル防共回廊構想」と聞くと時代錯誤の典型のように思えなくもないが、ソ連と中国との連携を分断しようとした日本陸軍の狙いは、軍事戦略としては筋が通っていた。もっとも本書の主人公は高級将校や政治家ではなく、モンゴル、ウィグル、チベットの戦略性を早くから見抜いて長期旅行、居住を敢行した外交官や諜報員たちである。現地の風俗習慣や言語を自らのものとし、時にすっかり現地人になりきった彼らの思いと行動が膨大な資料により明らかにされる。

他方、民族自立を目指す回教指導者たちの行動と日本とのかかわりも詳細に描かれ、その失敗を目論む中国(漢族)の動きとともに、中国少数民族問題を理解するのに大いに役立つ。イスラーム地政学の重要性からいっても、日本のユーラシア戦略を考えるうえで参考になる史実がたっぷり詰まった力作。地図が物足りない点だけは惜しまれる。(純)

祥伝社 1785円

  

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