なぜ"水戸岡列車"が全国各地で増殖中なのか しなの鉄道「ろくもん」も「ななつ星」のデザイナー

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別の機会に水戸岡氏に「JR九州の観光列車に似ているのではないか」と聞いてみるチャンスがあった。その答えは「似ているというよりも、JR九州の兄弟みたいなものです」というものだった。

「安いコストで車両を作らないといけないし、僕らが職人を集めて制作をコントロールしないといけない。そのため、JR九州の車両を製造した職人さんたちにお願いすることになる。結果として、JR九州の車両と似てしまう」

少ない予算で、レベルの高い観光列車が導入できるのであれば、資金力のない鉄道会社にとってこんなにありがたいことはない。「JR九州のデザイン料を使って、ほかの地域おこしをしていることになるが、これについては唐池さん(JR九州会長)からも了解をもらっている」と、水戸岡氏は言う。その点では、JR九州も太っ腹だ。

独自デザインを模索する動きも

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のと鉄道の観光列車には、能登ヒバなど地元産の素材を使う予定だ

では、水戸岡デザインの観光列車がさらに全国で増えるかというと、水戸岡氏のスケジュールの都合などもあり、限界があるだろう。それに、あまり水戸岡デザインばかりが増えると、希少価値もなくなる。

そんな事情もあってか、独自の観光列車デザインを模索する鉄道会社もある。石川県の第3セクター鉄道・のと鉄道が開発中の観光列車は、名古屋市のデザイン会社「コボ」代表の山村真一氏に車両デザインを依頼した。

山村氏は三菱自動車で「ギャランFTO」「ランサー」などのデザインを手がけたほか、輪島漆器の新商品開発を指導するなど、石川県とのかかわりが深い。「石川県のエコデザイン審査員も務め、地元産品の強みを知り尽くした存在」(のと鉄道広報担当)である。

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JR西日本が投入予定の「七尾線観光列車」の完成予想図

他社では既存の車両を改造して観光列車に仕立てるケースが多いが、同社では県や沿線自治体からも支援を得て、約3億円で2両編成の車両を新造する。能登地方の天然素材や伝統工芸品を活用した車両ができあがるに違いない。

のと鉄道の観光列車は来年のゴールデンウィークの運行開始予定だ。同年3月には北陸新幹線が金沢まで延伸し、さらに秋にはJR西日本が金沢―和倉温泉間に豪華観光列車を投入する。そのデザインを担当するのは、近鉄の豪華観光特急「しまかぜ」をデザインした山内陸平氏と井上昭二氏。来年の北陸エリアでは、鉄道デザインの競演が楽しめそうだ。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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