保有残35兆円、「日銀のETF買い」に意義はあった 元金融政策担当理事に聞くETF購入の功罪

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日本銀行の金融政策担当理事などを務めた前田栄治氏は「今回の『点検』は、金融緩和をより効果的で持続的にすることを目的としている」と語る(写真:ちばぎん総合研究所)
日本銀行が3月18~19日の金融政策決定会合で行う「金融緩和の点検」の背景や見通し、国内外の物価・金融情勢について、ちばぎん総合研究所社長で前日本銀行理事の前田栄治氏に聞いた。
前田氏は1985年に日銀に入り、チーフ・エコノミストにあたる調査統計局長やオペ(公開市場操作)の責任者である金融市場局長を歴任。2016年5月に国際担当の理事に就き、2018年3月から2020年5月まで金融政策担当の理事を務めた。

点検で金融政策にメリハリ

――日銀が「金融緩和の点検」を決めた背景は何でしょうか。

いちばん重要なポイントは、物価がなかなか上がらないということだ。コロナの前から2%の物価目標達成は簡単ではないというのが日銀の基本認識だった。黒田総裁が述べているとおり、コロナ禍で物価がさらに上がりにくくなっている。

そうすると金融緩和を長く続けざるをえない。ただ、金融緩和には市場機能や金融仲介機能(金融機関収益)への副作用もあり、長く続けるためにはその副作用に対応していく必要がある。

今回の点検は、金融緩和をより効果的で持続的にすることを目的としている。「より効果的」という点も強調しないと、マーケットに「金融緩和の後退」と捉えられる恐れがある。コロナ禍が続く中、日銀はそれだけは絶対に避けたい。

2013年に量的・質的金融緩和が始まり、2016年9月にはイールドカーブ・コントロール(YCC)を導入した。ターゲットを「金利」にシフトさせ、国債買い入れをより柔軟かつ機動的にできるようにした。ETFの買い入れも、2016年7月に原則として年6兆円へ倍増させ、その後買い入れを弾力化した。

ところが、2020年春にコロナショックが発生し、ETFの買い入れ上限を年12兆円に引き上げた。国債買い入れの上限も外した。これらの市場安定効果は大きかったと思う。

今回の点検では、こうした経験を踏まえ、やるときには思い切って「買う」、そうでないときは「買わない」という対応が検討されるのではないか。

東洋経済プラスの連載「黒田日銀『苦闘』の最終章」では、この記事の続きを無料でお読みいただけます。連載では黒田日銀下の金融政策の課題を取り上げています。
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中村 稔 東洋経済 編集委員
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