保有残35兆円、「日銀のETF買い」に意義はあった 元金融政策担当理事に聞くETF購入の功罪
点検で金融政策にメリハリ
――日銀が「金融緩和の点検」を決めた背景は何でしょうか。
いちばん重要なポイントは、物価がなかなか上がらないということだ。コロナの前から2%の物価目標達成は簡単ではないというのが日銀の基本認識だった。黒田総裁が述べているとおり、コロナ禍で物価がさらに上がりにくくなっている。
そうすると金融緩和を長く続けざるをえない。ただ、金融緩和には市場機能や金融仲介機能(金融機関収益)への副作用もあり、長く続けるためにはその副作用に対応していく必要がある。
今回の点検は、金融緩和をより効果的で持続的にすることを目的としている。「より効果的」という点も強調しないと、マーケットに「金融緩和の後退」と捉えられる恐れがある。コロナ禍が続く中、日銀はそれだけは絶対に避けたい。
2013年に量的・質的金融緩和が始まり、2016年9月にはイールドカーブ・コントロール(YCC)を導入した。ターゲットを「金利」にシフトさせ、国債買い入れをより柔軟かつ機動的にできるようにした。ETFの買い入れも、2016年7月に原則として年6兆円へ倍増させ、その後買い入れを弾力化した。
ところが、2020年春にコロナショックが発生し、ETFの買い入れ上限を年12兆円に引き上げた。国債買い入れの上限も外した。これらの市場安定効果は大きかったと思う。
今回の点検では、こうした経験を踏まえ、やるときには思い切って「買う」、そうでないときは「買わない」という対応が検討されるのではないか。
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