働き方改革「制度利用」進まぬ現場に欠けた視点 変形労働時間制に限らず業務仕分けは大前提

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自分たちの常識が実は世間の非常識だった、なんてことはどの業界でもよくある話。学校現場でも、従来のやり方に固執してしまい、働き方や授業の改革が進まないケースも多いのではないだろうか。そこで本連載は、「ココを変えればもっと学校現場がよくなるかも!」といった提案を、田中光夫先生の“フリーランスティーチャー”ならではの視点でお届けする。第2回のテーマは、「職員室の働き方改革」。田中先生が手応えを感じた制度利用の事例や、常々疑問に思う点とは。

制度の存在を知らない教員が多すぎる

――前回(「定時帰宅」と「授業の質」を両立するスゴ技2選)は、個人レベルで可能な「仕事の引き算」についてお話しいただきましたが、職場全体で働き方改革が進んだエピソードなどはありますか。

では、制度の積極的な利用が大事であると感じた経験を紹介しますね。僕はフリーランスになってから、「時差勤務制度」をよく使っています。ちなみに目的は、研修会講師や執筆といった学校外での活動時間の確保と、通勤ラッシュの回避です。

以前、病休教員の代わりに担任を務めた公立小学校でも、契約時に「30分前倒して勤務させてください」と管理職に申し出て許可をいただきました。初出勤日に「諸事情により30分早く勤務を開始して16時15分にはいなくなります」と自己紹介したら、みんな「そんなのアリ?」と笑っていましたね。

でも、そのうち「田中先生、帰る時間だよ」と声をかけてくれるようになったり、会議を早めに始めてくれたりして。結果的に、僕がいることで強制的にほかの先生の仕事も前倒しされ、職員室全体の残業が少し減ったんです。みんなファーストペンギンになるのを怖がりますが、誰かが制度を使い始めることによる効果は大きいと感じました。

当初、同僚は田中先生の時差勤務に少々ざわついた

――時差出勤は、コロナ禍の休校中に推奨した自治体も多かったですね。

東京都は車通勤が原則認められていないので、電車通勤時の密を避けるために利用者が増えたように思います。僕が知っている東京都のある小学校では、緊急事態宣言を受けて5~6人の先生が利用を始めたら早く帰れるようになったそうで、休校が明けた今でも時差出勤を続けている先生がいると聞いています。もともとは主に育児中の教員が使う制度だったようですが、これを機に利用が広く認められるようになるといいなと思います。

例えば、仕事を早く片付けるため朝7時に学校に来ている先生は、その時間を勤務開始時刻にすればいい。そうすれば、仕事が残らない日は本来の定時より早く帰れる。申請には理由を求められる場合がありますが、「簡単に申請が通るわけがない」と決めつけず、まずは職場で相談してみてはどうでしょうか。

しかし、そもそも制度の存在すら知らない先生が多い。今や神奈川県横浜市のように教員版フレックスタイム制度を導入するところも出てきています。柔軟な働き方をしたい人は、まず管理職にどのような制度があるか聞いてみるといいと思います。教育委員会に尋ねて資料をもらい、それを基に管理職に相談するのもよいでしょう。

「ミドルリーダー」の働きかけが重要

――自治体によっては育児や介護をする人に配慮した制度が整いつつあると聞きますが、そのあたりの制度活用の実態は?

残念ながら、事情がある人ですら「制度を使いたい」と言い出しにくい雰囲気をまだ感じます。育児中の人が、制度を利用せずわざわざ年次有給休暇制度(以下、年休)を使って保育園の送迎をやり繰りしているケースも。誰もが制度を利用できる開放的な風土づくりも大きな課題です。

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