働き方改革「制度利用」進まぬ現場に欠けた視点 変形労働時間制に限らず業務仕分けは大前提

✎ 1 ✎ 2 ✎ 3 ✎ 4 ✎ 最新
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

ここをクリアするには、校長や教頭が使える制度を周知して活用を推奨するほか、30代~40代のミドルリーダーの働きかけがカギになるかと。今、団塊世代が退職して全教員に占める若手教員の割合が高くなり、ミドルクラスの負担が相当増えているので働き方改革に手が回らない状況もわかるのですが、やはり権限がある人じゃないとできないことがある。

例えば、学年会議は、主任が「18時から会議ね」と言ったら若手は断れない。正規教員時代、僕はそれで帰りが遅くなるのが嫌だったので、学年主任になった際は「遅れる人がいても子どもが下校した直後の15時20分から会議を始め、15時45分までに終わらせます。その後の休憩時間はそれぞれ自分の時間です」と最初に合意形成をし、時間厳守で実施していました。

また、資料を事前にメンバーに配り読んでおくようお願いしていましたね。そうすると、合意を得るだけで終われる会議もある。今はICTに抵抗のない若い先生が増えているので、LINEやSlack、Chatworkなどを通じて資料を共有するのもオススメです。

僕はOJTにも力を入れていて、これも時間厳守でやっていました。希望者参加型で、勤務時間内の16時30分から45分までの15分間講義ですが、時間がきたら途中でも必ずやめるんです。「定時になったら退勤していい」というメッセージにもなりますし、「もっと知りたい」と次にまた若手が学びに来てくれるサイクルができました。

体調不良時に休めないのはおかしな話

――年休制度も利用率が低そうですね。

みんな翌年に繰り越しまくっています。3日間くらいしか使っていない若手も多い。僕は正規教員だった頃からバンバン使っていますが、学校は人手不足で丸一日休むのは気が引けるため、1時間単位での使用を重ねてきました。教員は、年休を1時間単位で使用できますから。

よくやるのが15時退勤。僕が勤務する公立校はたいてい、8時15分から16時45分までが勤務時間で、15時45分から16時30分までが休憩時間でした。15時から15時45分までと最後の15分間を足した1時間に年休を充てれば15時に退勤が可能なのです。割と一般的な使い方で、やむをえず用事があるときなどにみんな利用しています。

おかしいのは、体調不良のときや子どもが熱を出したときなどに年休を使って早く帰ったり休んだりといったことがしづらいこと。これも風土の問題ですが、日頃から「困ったときはお互いさま」の精神で声をかけ合い譲り合うほか、行事計画などを早めに進めておくことで、年休を取りやすくすることは可能なはずです。見通しをつけておけば余裕が生まれ、誰かの体調が悪くなったら会議をほかの日に変更するなど柔軟な対応ができますよね。

教員は「サービス業」ではない

――制度といえば、話題の「変形労働時間制」は現場の反発が大きいです。

簡単に言うと、残業をお願いされる時期があるけど、働いた分を記録でき、夏休みなどほかの時期にまとめて振り替えることができる制度。うまく使えば救われる人もいると思いますが、多くの教員が長時間タダ働きしているのが現状です。年休すら普段から使えていないので、みんな「この制度は意味がない!」と思うのでしょう。しかし、変形労働時間制に限らず、時差勤務制度やフレックスタイム制度なども、仕事の仕分けができていないとうまくいかないと思います。

図らずもコロナ禍で学校行事の精選がようやくできました。運動会を半日にしたり、卒業式を簡略化したり、保護者の観覧は動画閲覧にしたり。それでもいい行事になったし、教員のプレッシャーも減って授業時数も確保できた。僕の周りでは「例年より速い進度で授業が進んでいる」なんて先生もいます。でも、残念ながら多くの学校が元のスタイルに戻ろうとしている。フリーランスになって改めて「変だな」と思うのは、学校はどこか自分たちがサービス業だと思っている点。その感覚から脱却し、コロナ禍でのやり方をベースにアフターコロナの行事を再考すべきではないでしょうか。

次ページはこちら
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事