子どもがSNS加害者になる「怒りの連鎖」の怖さ 被害だけでなく炎上騒ぎの加害にも注意を

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ネットでの誹謗中傷が社会的に大きな関心を集めている中、2020年4月から、誹謗中傷の被害者が匿名投稿者を特定しやすくするための制度見直しの議論が始まった。20年12月には総務省の有識者会議が新たな裁判手続きの創設を柱とする最終案の取りまとめが出来上がった。今後、関連法も改正される見込みだ。

これまで匿名の投稿者特定には、SNS事業者に投稿者のIPアドレス(インターネットの住所にあたる識別子)の開示を請求。そのIPアドレスを割り振った接続事業者(インターネットプロバイダー)に契約者情報の開示を求めるという2段階の請求が必要だった。しかも、両事業者ともに裁判外の請求だけで開示することはまれで、実際には、それぞれに訴訟を起こさなければならなくなる。

新たな制度は、両事業者への裁判手続きを1度にまとめて行えるようにする。また、総務省も省令改正でSNS事業者が本人確認のために取得している電話番号を開示対象に追加するなど、匿名投稿者の特定手続きの簡素化を進めているが、匿名投稿者の特定には膨大な手間とコストがかかるのが実情だ。

深澤弁護士は「表現の自由の観点もあり、情報開示が劇的に容易になることはないでしょう。誹謗中傷の投稿者を相手取った名誉毀損の民事訴訟で裁判所が認める慰謝料は、一般的に数万円から高額になっても数十万円程度と、裁判費用の回収も難しい金額になることがほとんどではないでしょうか」と話す。

そのため、被害者が泣き寝入りするケースも多いが、「逆に開示請求・訴訟を決断した場合は、出費をいとわずに追及するという覚悟を決めている、と言えるでしょう」と深澤弁護士は指摘する。

被害者から投稿者情報の開示請求を受けた事業者は個人情報開示の可否について投稿者に意見を求めてくるので、その時点で名誉毀損に問われる可能性を把握できる。中には、多数の人を相手取って威圧的に過大な慰謝料を請求してくるケースもあるので、そうした問い合わせを受けたとしたら、早い段階で弁護士に相談して適切に対応することが求められる。

炎上騒ぎでは怒りに酔った書き込みが連鎖することを理解して

誹謗中傷問題の「加害者」にならないようにするにはどうしたらいいのか。ネット上での炎上騒ぎでは、怒りの書き込みがそれを読んだ人に伝染し、増幅されていく連鎖が起きている状態ともいえる。投稿者たちは『非難されて当然だ』、『悪いことをしたのだからやっつけるのが当たり前だ』と思い込み、次々に誹謗中傷の書き込みを重ねていく。深澤弁護士は「怒りに酔う構図」と指摘しているが、そうした視野の狭い自己本位の正義感のような感情に加え、匿名投稿だから自分は安全だという思いが、炎上騒ぎに拍車をかけるのだろう。

深澤弁護士は、保護者や先生たちへのアドバイスとして「怒りに酔ってしまうと、自分が自分ではなくなってしまうことがある、つまり、正常な判断ができなくなるのです。まずは、誰でも怒りに酔って自分を見失うことがあることを、子どもに理解してもらうことが重要です」と語る。

そのうえで「例えば、飲酒したら車の運転をしてはいけないのと同じことで、怒りの感情になったら書き込みを控えないと、深刻なトラブルに巻き込まれるかもしれないことをきちんと伝えて欲しい」と語る。怒りにまかせて書き込みボタンを押そうとした時は、一晩、眠って怒りをさましてから考える、といった習慣づけが必要ではないだろうか。

(注記のない写真はiStock)

制作:東洋経済education × ICT編集チーム

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