「動くガンダム」がついに実現した大きな意味 アニメ開始から40年、実物大ガンダムの舞台裏
企画の開始は2014年。ガンダムをアニメの中の設定と同じ大きさで再現して動かすべく、「ガンダム グローバル チャレンジ」(GGC)と名付けられたプロジェクトが立ち上がった。まずはアニメ『機動戦士ガンダム』原作者・富野由悠季氏を中心に、5人のリーダーが動くガンダムの理念を集約。そこから、実際に動かすために3人のディレクターが設計・制作を主導した。
2009年の「立つガンダム」プロジェクトでもメンバーを務め、今回のGGCディレクターとしてデザインや演出を担当した乃村工藝社の川原正毅氏は、「ガンダム立像が立った時、いずれガンダムを動かしてほしいと多くの人から言われた。その10年分の宿題を果たせたのではないかと思う」と語る。
実際に動くガンダムを作るという、これまで誰も成し遂げたことない巨大プロジェクトは当然1社だけで実現できるはずもなく、日本中の技術を結集する必要があった。
実現に協力したテクニカルパートナーは9社。例えば、さまざまなポーズがとれるよう指一本一本が独立して動くガンダムの手の部分は、アミューズメント施設の恐竜型ロボットなどを手がけてきたココロが担当。ガンダムの動作における安全評価やそれを実現するための機器選定、電気配線は、同領域のプロフェッショナルがそろう三笠製作所が担当した。
会社を辞め、人生を賭けたディレクターも
「雨の日も風の日も、巨大なガンダムを1年以上無事に動かし続けるため、私たちが持てる最高の技術が集合した。振動にも強く、滑らかに動かすためにはどうすればいいかを試行錯誤した」。GGCでシステムディレクターを務めた、アスラテックの吉崎航・チーフロボットクリエイターは、開発の日々をそう振り返る。
人々のイメージの中にあるガンダムらしさを表現するために、外装のデザインと現在の技術で実現できる制御の仕組みを両立させるには多くの制約がある。巨大な建築物でもあり、重機でもある「動くガンダム」を安全に動かすためには、産業用ロボットの制御技術も組み合わせなければならなかった。
GGCのもう一人の立役者、ロボット・機械システム設計の専門家である石井啓範・テクニカルディレクターは、それまで勤めていた日立建機を辞め、2018年からプロジェクトに参加。メカ全般や安全面のリスク評価、組み立てでは現場指揮官としての役割を担い、「動くガンダム」の実現に自らの人生を賭けた。石井氏は「1つひとつの課題をクリアしながらリアルさを追求した。その点を実際に見て感じてほしい」と期待を込める。
こうして公開に至った動くガンダムプロジェクトやその展示施設は、バンダイナムコHDの知的財産(IP)戦略においても大きな意味を持つ。同社では近年、自社グループのキャラクターからの収益を増やすために人気IPへの投資を加速してきた。
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