NHKにメッタ刺しされた「レオパレス」の恨み節 番組めぐり再三NHKに謝罪を求めていた

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「番組の中で特定の個人や企業に関する情報を報じる際、当該企業あるいは個人を実名とするか匿名とするかは、取材で得られた情報、報じる内容や事案の社会的影響の大きさ並びに一般の認知度、そしてプライバシーの保護の必要性や情報源の秘匿など、あらゆる要素を総合的に考慮し、判断しております。一方で、当然のことではございますが、公共放送として、特定の個人や企業を宣伝し、あるいはあえて貶めるなどの目的で、実名・匿名等の判断を行うことは一切ありません。

恐れながら、個別の番組に関する判断や制作の過程については、報道の自由及び編集権に密接に関わる重要な情報になりますゆえ、原則として一律にお答えしてはおりませんが、今回の番組についても、上記のような総合判断のもと、制作・放送いたしました。(中略)サブリース問題の代表格が貴社であると印象付けてしまうとのご指摘は、いずれも当たらないものと考えております(後略)」

ところが、この回答にはレオパレス21側は納得していない。ある社員は、「メディア対応ができていないから風評被害がすごい。(テレビ東京)『ガイアの夜明け』から始まって、テレビ、新聞、雑誌すべてにたたかれた。それにしても天下のNHKにあんなひどい内容のものを放送されても訴えることもできないのだから嫌になる」と憤る。

もっとも、NHKの番組作り自体がずさんだったかどうかは微妙だ。メディア研究者で、上智大学文学部新聞学科の水島宏明教授は、「番組を見ていないので、あくまで一般論で」という前提でこう話す。

「今回のような場合、どこの企業名を出すかどうかは報道側にゆだねられている。サブリースの問題というのはもともとレオパレスに限らず、いろいろ問題化したケースで、視聴者にとって馴染みの深い社名を使うのはテレビではよくあるやり方だ。もちろん放送の場合は放送法があって、公正、中立と定められてはいるが、他方で放送の自由、報道の自由も決められているので、取材された側は怒るだろうが、レオパレスの社名だけ強調したのが非常に恣意的である、とは受け止められない」

「ガイアの夜明け」手がけた制作会社

ちなみに同番組のエンドロールには、制作著作として「日経映像」という社名が出てくる。同社は、『ガイアの夜明け』の制作も請け負っているプロダクションで、2年前、レオパレス21のアパートの天井裏に遮音や延焼を防ぐための界壁がないことをスクープした時にも日経映像が制作に名を連ねていた。つまり、レオパレス21問題の第一人者である制作会社が同番組にもかかわっていたわけだ。

今回の件について改めてNHKに尋ねたところ、「番組は、NHKエンタープライズを通じて(株)日経映像に制作を委託したもので、放送で伝えた内容は事実と認識しています。個人や企業名を実名で紹介するかどうかは、取材で得られた情報、事案の社会的な影響の大きさなど、様々な要素を総合的に考慮して判断しています」という回答が返ってきた。

レオパレスが名誉挽回できる日は来るのだろうか。

千波 鴻一 ジャーナリスト

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せんばこういち / Koichi Senba

週刊誌記者歴25年。政治経済事件事故を数多くカバーしている。

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