任天堂、「あつ森」のメガヒットが起こす好循環 販売本数は歴代トップのマリオカートに迫る

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「あつまれ どうぶつの森」の大ヒットでスイッチの販売も好調(写真:田所千代美)

首位のマリオカートにどこまで迫るか――。11月5日に予定されている任天堂の中間決算で注目の数字が発表される。世界的なブームとなっているスイッチ向けソフト「あつまれ どうぶつの森」(以下、あつ森)の販売本数だ。

2020年3月に発売されたあつ森の勢いは異例ずくめだ。発売から6週間で1341万本(国内・海外の合算)を売り上げ、過去のシリーズの中でも最速で1000万本を超えた。6月末時点の累計世界販売は2240万本に達し、すでにNintendo Switch(以下、スイッチ)向けソフトの中では歴代2位の座につけている。

あつ森のゲーム内容は、無人島にユーザーが移住し、どうぶつたちと交流しながらその暮らしを楽しむというもの。

仮想空間でほかのユーザーや登場するキャラクター(住人たち)と交流できる。そのため、新型コロナウイルスの感染拡大からステイホームを余儀なくされたユーザーにとって、コミュニケーションを気軽にとれたことがヒットの要因になったといわれる。

だが、コロナという外部要因だけが、シリーズ最大のヒットを生んだわけでない。最新作ではさまざまな仕掛けを設けている。

「あつ森はすっかり生活の一部になった。半年以上経った今でも毎日遊んでいる」。20代の女性はそう話す。ユーザーにとってゲーム空間が“日常化”したのは、7月30日から始まった季節限定のアップデートも大きいとみられる。

新規ユーザーも取り込む

これにより、8月は毎週日曜日の夜に花火大会がゲーム上で開催された。9月30日から第2弾のアップデートを実施。10月31日に開催するハロウィンのイベントに向けて、ゲームの中でかぼちゃを育てたり、本格的な仮装ができたりする。こうした追加コンテンツの配信が、ユーザーを飽きさせない効果的な要素となっているようだ。

あつ森の大ヒットによって、新規のユーザーがゲーム機本体であるスイッチを購入し、新作・旧作を問わずさまざまなソフトが売れる好循環をもたらしている。

ファミ通調べの国内家庭用ゲームソフト販売ランキング(2020年9月)では、トップ3がスイッチ向けソフトだった(1位「スーパーマリオ 3Dコレクション」(2020年9月18日発売)、2位「リングフィット アドベンチャー」(2019年10月発売)、3位「あつまれ どうぶつの森」)。

きわめて好調な任天堂だが、現在公表している2021年3月期の業績見通しは減収減益。「最大商戦期である年末商戦の見通しが立たない」という理由から慎重姿勢を貫く。もっとも、2020年4~6月期の営業利益は1447億円と通期見通し(3000億円)の約半分を稼ぎ出している。折り返し地点(中間決算)で利益はどこまで拡大するか。あつ森の販売本数とともにもう1つの大きな注目点だ。

『東洋経済プラス』では「進化する任天堂」として、あつ森ヒットの秘訣や開発力の分析など、4本の記事を掲載しています。
プロローグ/任天堂に到来した「好循環」
「あつまれ どうぶつの森」メガヒットの秘訣
任天堂「独自の遊び」を生み出す開発力
エピローグ/スイッチの「次」が担う重責
菊地 悠人 東洋経済 記者

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きくち ゆうと / Yuto Kikuchi

早稲田大学卒業後、東洋経済新報社に入社。流通・小売業界の担当記者を経て2017年10月から東洋経済オンライン編集部。2020年7月よりIT・ゲーム業界の担当記者に。

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