「産直輸送」はコロナ危機の鉄道・バスを救うか 空きスペースで生鮮品など運ぶ「貨客混載」

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新幹線での農水産物輸送はこれまでにも例があるが、在来線特急による輸送は今回がJR東日本で初めてだ。伊勢エビを入れた箱は客室内ではなく、列車内の倉庫(車販準備室)に積んだため、正確には「貨客混載」ではないという。

特急「踊り子」で東京駅の産直市会場に到着した伊勢エビ(記者撮影)

同社横浜支社小田原地区センターの矢島泰行助役によると、今回の取り組みは現場社員が伊豆を盛り上げようと産直市を企画する中で、「ほかの支社で新幹線を使った輸送の事例があるのを踏まえ、伊豆の海産物を特急『踊り子』で運べないかと考えた」ことから生まれた。狙いは、列車で運んだ伊豆の名物を提供することで、「次はぜひ現地に『電車で』足を運んでもらう」ことだ。

列車で輸送するメリットについて矢島助役は、「伊豆は渋滞が多いため、列車は時間が確実という優位性がある」と話す。今回は海が荒れて漁に出られなかったため輸送しなかったが、例えば伊豆名産のキンメダイの場合、前日の朝に出漁して午後に競りにかけられたものを、翌朝の「踊り子」に積めば昼過ぎには東京に着く。今回は3日間のトライアルだが、「事例を勉強して今後も幅広い展開をしていきたい」(横浜支社広報)という。

高速バスで運んだ食材を提供

新幹線や特急による農水産物の輸送が拡大しそうな中、すでに広がっているのが高速バスによる貨客混載の取り組みだ。東京・新宿には9月4日、高速バスで全国各地から届く食材を使った料理を提供する施設「バスあいのり3丁目テラス」がオープンした。

新宿にオープンした「バスあいのり3丁目テラス」。高速バスで各地から届いた食材によるメニューを提供する(記者撮影)

同施設は農業マーケティング会社のアップクオリティと三菱地所の協業。メニューには岩手県や福島県など東北地方から四国各県まで、都心部に到着するさまざまな高速バス路線の出発地の食材を生かした料理が並び、各地の地ビールなども提供する。

両社などは2018年から高速バスのトランク(荷物室)空きスペースを活用した地方特産品輸送「産地直送バスあいのり便」に取り組んでおり、9月上旬時点で全国50地域・56路線と連携。バスで運んだ各地の産物を都心部のイベントで販売したり、飲食店に納品したりしている。都市部に集まった各地の食材を地方へ向かう下り便に積み、都市から地方への物流も構築しているという。

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