「産直輸送」はコロナ危機の鉄道・バスを救うか 空きスペースで生鮮品など運ぶ「貨客混載」

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生産者側から見た高速バス貨客混載の利点は、配送ルートの確保がネックとなる生産量の少ない農産物などを低コストで輸送し、都市部へ出荷できることだ。バス会社側には空きスペースを使って収益を得られるメリットがある。

高速バスのトランクに積んだ農産品を運び出す作業=2018年8月(記者撮影)

コロナ禍で長距離高速バスの利用が低迷する中では無視できない収入になりそうだが、アップクオリティの泉川大社長は「一定の運賃を支払うので収益のメリットもあると思う」としつつ、「地域産品の輸送にバス会社が率先して取り組むことで地域貢献につながり、ブランディングになる。その点で(バス会社に)非常に積極的に参加してもらっている」と話す。

バス会社側も利用者減少を補う収益源というよりは、地域との連携を主なメリットとして捉えているようだ。

東日本のあるバス会社は「空いた空間の活用である程度の収入を得られるが、金額としては減収をカバーするまでには至らない。ただ、バスは地域あっての事業なので、地元との連携という点でプラスになる」と説明する。別のバス会社も「収入というよりは、食材を通じて路線の目的地に関心を持ってもらえれば」との考えを示す。

「現地に行ってみたくなる」効果

JR東日本の特急「踊り子」を活用した輸送も、コロナ禍による利用者減少を補うことが直接の狙いではないという。同社は「伊豆の名産品を早く首都圏に届けて味わっていただきたいということが第一。コロナ禍の(利用低迷が続く)状況の中、結果的にある程度の収入になることがあればいいが、収益の確保が目的ではない」(横浜支社広報)と説明する。

列車やバスを活用した農水産物の輸送は、多少のプラスにはなるものの、コロナ禍での減収を直接カバーする収益源にはならなさそうだ。だが、特急列車や高速バスによって運んできたとPRすることで、消費者がその産地や沿線に目を向ける機会になりうる。

関係者が期待を寄せるのもその点だ。JR東日本横浜支社の矢島助役は「『踊り子』で運んだ名産品を食べてもらうことで、現地で本物を楽しみたいと思うきっかけになってほしい」。アップクオリティの泉川社長も「食の魅力を感じることで、その産地に行ってみたいという気持ちになってもらえれば」と語る。

今後も広がりが予想される農水産物の貨客混載。輸送自体の収益性を高めると同時に、産地と消費地を結ぶ列車やバスの利用を喚起できるかどうかも重要なポイントになりそうだ。

小佐野 景寿 東洋経済 記者

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おさの かげとし / Kagetoshi Osano

1978年生まれ。地方紙記者を経て2013年に独立。「小佐野カゲトシ」のペンネームで国内の鉄道計画や海外の鉄道事情をテーマに取材・執筆。2015年11月から東洋経済新報社記者。

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