平城宮跡を貫く近鉄線「移設計画」は実現するか 40年前からの懸案が進展、しかし課題は山積
一方、現在の大和西大寺―近鉄奈良間4.4kmの所要時間は5~6分ほど。線路を移設すると300mほど長くなるとみられ、大和西大寺駅寄りの2カ所には急なカーブもできる。数分程度は所要時間が延びそうで、現行のサービス水準より低下する。
ただ、現在の大和西大寺駅は4方向からの線路が平面上で複雑に交差し、1方向の列車が遅れると、ほかの3方向にも遅れが拡大しやすい。線路の配線を高架化にあわせて改良できれば遅延の発生率は縮小し、結果的にサービスの低下分と改善分を相殺できるかもしれない。こうした考え方も、今後の協議で議論されるだろう。
移設に関して市民のコンセンサスが得られているかどうかも不透明だ。2010年、奈良県が市民や観光客を対象に実施したアンケート調査では、宮跡を横切る現状について「電車が通過する景観が見苦しい」など否定的な回答は3割程度にとどまり、逆に「車窓から平城宮跡が見えることにより、奈良らしさを感じられる」など、現状肯定の回答が6割以上を占めた。
連立事業の工期は数十年レベル
ちなみに、阪急淡路駅付近の連立事業は1996年度に事業認可を受けて用地買収が始まったが、工事が本格化したのは約10年後の2008年度。この時点では2017年度の高架線への切替完了を予定していたが、用地買収の難航からいまも工事中で、現在は2024年度の切替完了を目指している。奈良県と近鉄の協議がまとまって早期に事業化できたとしても、実現までに数十年の歳月がかかるだろう。
さまざまな課題はあるが、踏切改良計画の提出期限は2020年度末、つまり本年度末と定められている。このまま協議がまとまらなければ、改正踏切道改良促進法の規定で国土交通大臣が裁定する。近鉄が移設案を基本に協議する方向で合意したのも、国交相裁定で自社に不利な案が通ってしまう可能性を懸念したためかもしれない。
「本年度末」まで残り7カ月ほど。協議がまとまって具体案が出てくるのか、あるいは国交相の裁定を仰ぐことになるのか。今後の動きが注目される。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら