「教員に向けたアンケート2020年春」GIGAスクール構想、現場認知度は約50% 早期に児童生徒1人1台の端末の整備を

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現場教員にIT管理者としての負荷がかかる

アンケートでは現在の教育現場のITに関して、期待や不安、さらに今後期待できる教育現場のイメージを聞いたが、そこで寄せられたのは不安の声だ。

まず多かったのは、「機器やWi-FiなどのIT環境の整備の遅れ」だ。この点では、今回のパンデミックを受けて、文部科学省としても「GIGAスクール構想」の前倒しに取り組み、20年度の補正予算に総額2292憶円を追加計上した。学校側のPCやタブレットの1人1台対応を早期に実現することや、Wi-Fi環境が整っていない家庭に対し、モバイルルーターの貸与を自治体が支援するための予算も組んでいる。

前出の回答にもあるように、現状では現場の教員の約8割近くが「GIGAスクール構想」の内容をきちんと把握できていない。現場が理解できるような情報伝達が行われていない可能性も考えられる。これは企業のテレワークやデジタル推進でも課題になっているように、組織変革(チェンジマネジメント)の視点も必要ではないだろうか。

と同時に、「われわれは教育のプロではあるが、ITのプロではない」という回答が多く寄せられていることも見過ごせない。アンケートからは、学校によっては、現場の教員がセキュリティーやネットワーク管理に頭を悩ませ、機器設定やマニュアル作りまで担当しているケースも読み取れる。インフラの管理とまではいかなくとも、教科指導、生徒指導のうえに、配信用の動画編集に時間をかけなければいけないという訴えも多く、こうした状況は現場を疲弊させるだけだろう。各学校にIT専門職を求める声は理にかなったものだ。この点でも20年度の「GIGAスクール構想」補正予算の中には、ICT関連企業のOBや技術者を「GIGAスクールサポーター」として配置する支援予算が計上されている。こうした支援策をきちんと教育現場である学校側が理解し、上手に活用できる流れが生まれてほしい。

そのほか、現場からはネットワークインフラなどの施行状況による「地域格差」や、教員や生徒の「ITリテラシー格差」が生まれることを不安視するもの。また、自治体間でIT推進の差が生じるため、異動の際の適応の難しさなども懸念されている。

勝負はインフラが整った後の負荷軽減

ただし、「新型コロナの第2波に備えて、双方向で行えるオンライン授業導入を早期に行うべき」といった意見や、「現状PCで作成しながらも紙ベースで配布・保存しているものを電子化したい」といった業務の効率化に期待をする意見もある。

現在は、学校側と家庭側ともにデバイスやネットワークが整備されていないフラストレーション状況にある。まずは20年度中にインフラの整備が進められることを期待し、同時に現場の負荷軽減とIT専任者の配置などを視野に入れ、コロナ禍における一時的な対応だけでなく新たな時代の学び、そしてIT化により現場の負荷を少しでも軽減できる運用体制に舵を切ってもらいたいと思う。(写真:iStock)

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制作:東洋経済education × ICTコンテンツチーム

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小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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