ネットで話題、JR九州「感動動画」の誕生秘話 旅に出たくなるが「ステイホーム」も伝わる
鉄道撮影に関しては「ほぼ10割が九州内」と話す福島さん。JR九州のPRイメージでは沿線の人やD&S列車では乗客、客室乗務員の様子などを入れ込んだカットが多い。
「九州の人ってまず自分より相手、という感じが強いと感じています。自分が大変でも『あなた、今大変でしょう』と先に人のことを気にする。田舎のいいところがたくさん詰まっています。僕は田舎という言葉にマイナスの意味は全くなく、逆に田舎という存在に感謝しています。じいちゃん、ばあちゃんから子どもまで、目の前の出来事に手を取り合って立ち向かう気持ちが強いと感じます」。
「祝!九州縦断ウェーブ」などJR九州の広告についてもこう語る。
「これまで制作に関わってきたJR九州の広告物も地元の方の力無くしてはできないものばかりです。『頑張ろうね!』『やっとここまできたね!』『ありがとう!』とその撮影の場にはたくさんの感謝の言葉があふれ、涙あり、笑いあり、そういった気持ちに応えたい、いただいたお力を何倍にしてもお返ししたいと思って制作に関わってきました。『祝!九州縦断ウェーブ』制作時、沿線に集まった人たちを撮影するために他の新幹線が最高時速260kmで営業運転する中、撮影用の臨時列車は各所調整し時速60kmで徐行運転するという大きな挑戦をしました。このときから「まずはやってみよう」というJR九州の土壌が固まった気がしています」
日頃からJR九州と打ち合わせを重ね、需要がありそうなカットをあらかじめ用意しておくのが福島さんのワークスタイル。「今回のゆふいんの森のカットはなぜかなかなか使用されずに残ってきたのですが、ここで使われるために残っていたのかもしれませんね」と語ってくれた。
「その日」が来たら…
最後に制作に関わったメンバーの「その日」が来たらを聞いてみた。
「当たり前のようにD&S列車が走り、当たり前のようにみなさまと、また、あのふれあいをしたいです。その日まで九州でお待ちしています」(内田さん)
「うれしくて泣いちゃいますが、みんなでハグしたい。大声でSOMEDAYをみんなで歌いたい」(永山さん)
「新しい日常スタートを祝いつつ、以前のように毎日を大切に積み重ねていきたいです」(イシイさん)
「その日が来たらというより、その日までが僕の使命だと思っています。九州の魅力を盛り上げ、伝え続けてその日を迎える万全の準備をしたいです」(山田さん)
「温泉も沸かしたてで、おいしい食べ物もできたてで、温かい笑顔を準備して待っています。よーきてくれんしゃったね、ゆっくりしていきんしゃいね、という気持ちでお迎えしたいと思っています」(福島さん)
「今はこないで」と言うのではなく、「その日まで九州で待っているよ」と外出自粛を表現した本作品。こうした伝え方が今、一番心に届くのではないだろうか。
今ほど、「伝え方」が問われている時代はないだろう。不要不急の外出自粛が呼びかけられる中、「ステイホーム」という単語が私たちの生活の中に大きなキーワードとして誕生した。報道やSNS上では鋭利な言葉が飛び交っているシーンも少なくない。ただ、ステイホームを促す意味でどのような伝え方が心地よいか。JR九州だけでなく、多くの人がこれまでかけてきた時間がこの作品を生み出した。
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