ネットで話題、JR九州「感動動画」の誕生秘話 旅に出たくなるが「ステイホーム」も伝わる
今回の「その日まで」動画では、制作サイドのディレクションを担当した。
「新型コロナウイルスの影響で九州各地の観光地などのみなさんが“その日”まで、掃除やメンテナンスといった訪れる方を出迎える準備くらいしかできていない状況をシンプルにストレートに伝えたいと思いました。加えて、制作前に九州外に住む九州出身の友人と話す機会があったのですが、観光客の方だけでなく、この友人のように九州に帰りたくても帰れない人もいる。そんな思いを作中に出てくる「待っているよ」というメッセージに込めました。今回は感染防止のため、福岡から現地に向かってのロケができないことから、遠隔でコミュニケーションをとりつつ、JR九州各支社の社員がスマートフォン等で撮影したものをディレクションしています」。
コロナの影響はJR九州にも前代未聞の事態を及ぼしている。同社はGW期間中には運転予定だった全特急列車の運休を決めた。九州新幹線も予定されていた臨時列車に関しては当面運休となり、足元の新幹線や在来線特急の利用者数も大きく減っている。そんな中でも、九州から元気を届けたい。そんな思いが芽生えるまでには、そう時間はかからなかった。
3〜4日でプロジェクト立ち上げ
今回のプロジェクトの立上げに携わったJR九州鉄道事業本部営業部営業課の内田鉄朗さん。日頃からJR九州の最大の特徴である「A列車で行こう」、「かわせみ やませみ」など11つの観光列車「D&S(デザイン&ストーリー)列車」の運行や、その沿線の観光関係者、自治体と連携を取る業務に携わり、実際にその人たちと向きあってきた時間が長いだけに今回のプロジェクトにかけた思いは強い。
「新型コロナウイルスの影響で今、全D&S列車が運休を余儀なくされており、お客さまに大変申し訳なく思っております。自分自身も非常に悔しく、そして今まで列車を盛り上げてくれた沿線のみなさんにも申し訳ないという気持ちがあふれ、それと同時にすぐにお世話になってきたみなさんの顔が浮かびました。だから、今回の『その日まで』動画には多くの人の顔が登場しています。いっしょにつながってきたみなさんと何かできないかと4月に入ってから3〜4日の調整ですぐにプロジェクトを発足させました。早く発信することに意味があると思ったので、誤解のない表現、構成、なにより感染拡大に配慮しつつ、全速力で仕上げました」
中には「今のタイミングではない」、と反対意見を持つ沿線の関係者もいたそうだが、そこは持ち前のコミュニケーションで説得。完成した動画を見せると「背中を押してくれた」そうだ。
「今回、動画の作中には『JR九州』という単語は一度も出てきません。企業PRではなく、『チーム九州』として発信したかったからです。鉄道も最後にだけ『ゆふいんの森』が登場しますが、これもJR九州のイメージを入れ込みたいというよりは、これまでご利用いただいたみなさまや、沿線の方々に30年間育てていただいた大切な列車ということで由布岳の麓と由布院の街並みを行く風景として選択しました」。
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