「深緑のiPhone」を実現したある日本企業の正体 ティム・クックが埼玉の工場を訪れたワケ

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アップル社内でサプライヤーのことを「パーツメーカー」と言うと怒られるそうだ。あくまでパートナー、コラボレーションの相手であり、その多くにアップル側から声をかけ、高い品質や新しい技術、実装のアイデアをお互いに出し合う。

一方のサプライヤーからすると、アップルが求める厳しい品質基準を満たす製品作りへ切磋琢磨することによって、「品質に厳しい、うるさい」という他の企業の要件を軽く満たせる技術力がつく。セイコーアドバンスはアップルとの取り引きが売り上げの35%になるが、アップルとの協業を始めた結果、その他のビジネスも2倍に伸びたという。

適度な粘度に混ぜ合わせてできあがった白い塗料(筆者撮影)

ティム・クック氏は、アップル製品における色の重要性を語った。

「色は大切です。われわれ自身の表現手段で、例えばあなたはこの色のシャツにブラウンのジャケットを合わせているように、人々には自分に合った色のiPhoneを選ぶチャンスを得るべきです。そのため、Face IDやAシリーズチップなどの他のあらゆるテクノロジーで革新を起こしたことと同様に、『色』についても、われわれはイノベーションを起こしていきたいのです」(クック氏)

来年は新しい色のiPhoneが登場する?

これまでiPhoneは長らく、白、そして黒の2色展開が続いた。2012年にiPhone 5cでカラフルな展開を実現したが、性能が大きく上回る上位モデルに人気が集まり成功しなかった経緯があった。その失敗の一方で、iPhoneの色についての探求は他の技術と同様に重視されていたことがわかる。

色は大切、と語るティム・クック氏。iPhoneの色は、他の技術と同様のイノベーションを起こす必要性について説いた(筆者撮影)

2016年のiPhone 7ではアルミニウムボディで5色展開を実現。そのアルミニウムへ色を載せる技術をフレームに生かしつつ、2017年iPhone 8とiPhone Xではガラスへの色のプリント技術を用い、背面ガラスながらしっかりと色を深く載せる技術を実現した。ただしiPhone Xは再び黒と白の2色展開に戻ってしまった。

2018年のiPhone XRではガラスの背面を継承しつつ6色展開となり、iPhone 11にも引き継がれた。そして今回、セイコーアドバンスとともに仕上げたのがiPhone 11 Proシリーズの4色展開、ということになる。

クック氏はセイコーアドバンスのカラーサンプルを真剣な眼差しで確かめながら、「来年はもっと楽しみだね」と一言。あるいは、再び新しい色のiPhoneが登場することになるのだろうか。

松村 太郎 ジャーナリスト

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まつむら たろう / Taro Matsumura

1980年生まれ。慶應義塾大学政策・メディア研究科卒。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。著書に『LinkedInスタートブック』(日経BP)、『スマートフォン新時代』(NTT出版)、監訳に『「ソーシャルラーニング」入門』(日経BP)など。

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