地下鉄東西線、混雑率「199%→180%」への秘策 30年続く高い混雑率を一気に引き下げる

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2010年には、従来車や他線の車両で130cmのドア幅を、180cmと大人の背丈ほどもあるワイドドアを装備した新型車両15000系を13編成130両投入するなどの対策も行った。

ドア幅の広いワイドドア車両(編集部撮影)

ワイドドア車両は1990年代初頭にも5編成導入しており、これらの車両をラッシュ時に集中的に運行することで、乗降時間を多少なりとも減らすことができた。

2017年からはホームドアの設置が始まった。ホームドアを設置すると乗客の転落事故が防げる点で遅延解消に寄与するが、ホームドアがあるとドアの開閉が数秒長くなる。その結果、停車時間が延びてしまう。そこで、ホームドアと車両のドアが連動して動くセンサーをホームドアに設置して、開閉にかかる時間を短縮するという対策を講じている。

しかし、こうした取り組みは現状の混雑率をさらに悪化させないための取り組みにすぎない。東京メトロは2007年から最混雑時間帯を避けた乗車を呼びかけるオフピークキャンペーンを開始しているが、乗客のピークシフトだけでは混雑率の劇的な改善は望めない。混雑率を20%も下げようというのであれば、運行本数を増やすしかない。

混雑率180%以下は達成できるか

東京メトロ側は「秘策がある」という。まずは駅の大規模改良だ。現在、茅場町でホームの延伸、木場でホーム拡幅とコンコース増設、南砂町ではホームと線路の増設を行っている。これらは2022~2027年度に順次完成する予定だ。

ホームが延伸、拡幅されることで乗客の流れがスムーズになり、乗降時間の短縮につながる。南砂町では中野方面行きの線路とホームを増やし、列車を交互に発着させることで遅延の防止を図る。これらによって列車の運行時間が短くなり、単位時間当たりの列車本数を増やすことができる。

さらに、飯田橋―九段下間に折り返し設備を整備する。こちらは2025年度完成予定で、既存の折り返し線を本線化し、折り返し列車と後続列車の同時運行を可能にすることで増発の余地が出てくる。「これらの施策を総合して混雑率180%以下を目指す」と山村明義社長は意気込む。総事業費は1200億円という計画だ。

現在199%の混雑率を180%以下にするためには、計算上は、1時間当たり27本の列車を30本に増やす必要がある。3本の増発だ。はたして、列車本数を増やし、混雑率を目標どおり下げることはできるか。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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