2019年「流行語ゼロ」でもお笑い界が明るい理由 闇営業と共に実力派芸人の活躍目立った1年

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最近のバラエティー番組を見ている人にとっては、チョコレートプラネットというとIKKOと和泉元彌のものまねと「TT兄弟」のキャラのイメージが強いかもしれない。

だが、本来の彼らは『キングオブコント』でも何度も決勝に上がっている実力派芸人なのだ。そんな彼らが、バラエティー番組の企画であえて「はやりそうなネタ」として演じたのが「TT兄弟」である。それが実際にはやってしまったのは、彼らにとっても想像を超える事態だったのではないか。

『有吉の壁』は、今どき珍しい笑いの意識の高い番組だ。ディープなお笑いファンが好むような「裏の裏の笑い」を見せてくれる。その中で「TT兄弟」も「いかにもはやりそうなネタ」としてあえて演じられていたのだが、これが実際に有名になったのは、裏の裏が1周回って表になってしまったようなものだ。

逆に言うと、そういう場所でしかこの手のネタができない状況になっている。現在放映されているネタ番組も、どちらかというと本格志向のものが多く、芸人たちが「流行語大賞的なネタ」をテレビで披露する機会自体がほとんどない。

そんな中で、かつて一世を風靡したようなギャグやフレーズを持つ芸人たちは、むしろバラエティー番組に回帰しているという現象もある。番組内でインパクトを残すためのワンポイントリリーフとして、あえて彼らが起用されることがあるのだ。コウメ太夫などはその典型である。こういう人たちが現役で活躍しているため、そういう芸風の若手芸人が同じ立場で出てくるのはますます難しくなっている。

お笑い界の未来は決して暗くない

結局、お笑い界から流行語が生まれにくくなっているのは、お笑い界に活気がないからではない。「流行語大賞的」なネタやキャラで売れる人が減っているだけなのだ。一方では、全体のレベルが上がり、ネタのクオリティーが高い本格派の芸人ばかりが台頭しているのだから、お笑い界の未来は決して暗くはない。

「お笑い第七世代はみんなまじめでネタのレベルが高い」と言われることがある。今後はそれがお笑い界のスタンダードになり、業界全体はますます活性化していくのではないかと思う。

ラリー遠田 作家・ライター、お笑い評論家

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らりーとおだ / Larry Tooda

主にお笑いに関する評論、執筆、インタビュー取材、コメント提供、講演、イベント企画・出演などを手がける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)など著書多数。

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