失敗を「引きずる人」「糧にする人」の致命的な差 人生が終わるような失敗は「まず起こらない」
幸い、8階のトイレの個室に行くと、置きっ放しになっていた財布を発見し、ほっと胸をなでおろしました。
想像の「1/10程度」しか悪影響は起こらない
深呼吸をして、心を落ち着けることができたら、まず、自分が犯した失敗によって「具体的に、どんな問題が起こりうるか」ということを考えてみましょう。パニックを起こしているとき、私たちは実際に起こりうる問題の10倍ぐらい、大きな問題が起きると妄想してしまっていることが多いのです。
逆に言えば、現実に生じる問題の8割以上は、あなたが想像していることの1/10程度だということです。
え!? たった1/10!?と驚かれるかもしれませんね。でも、想像してみてください。あなたの人生で、ほかの誰かが失敗したことで、あなたの人生がひっくり返るほどの影響が起きたことが幾度あったでしょうか。現実的に考えて、1人の人間の失敗がもたらす影響というのは、意外にわずかなものなのです。
にもかかわらず、私たちは日常的な失敗でもかなり激しく動揺します。「上司に怒られるかもしれない」とか「取引先から契約を切られてしまうかもしれない」という不安で頭がいっぱいになる。これは結局のところ、「失敗そのもの」というよりは、失敗によって「他人からの評価」が損なわれることが、とても不安なのです。
この不安が強い人ほど、自分の失敗の影響を「過剰評価」します。この「過剰評価」はほぼ建設的な行動や発想にはつながりません。人間の心は動揺に弱いのです。
つまり、失敗を隠そうとしたり、自分の中で言い訳することばかりに気を取られて、肝心の「失敗の後始末」がおろそかになってしまう。その結果、失敗の悪影響が拡大し、かえって自分の評価を下げてしまうことにつながるのです。
とくに日本人は「人に迷惑をかけてはいけない」という価値観に、無意識のうちにきつく縛られています。この強迫観念が「失敗」と結びつくと、一気にパニックが起きます。つまり、同じ失敗でも「他人に迷惑をかけるような失敗」をしたとき、私たち日本人のメンタルは大ダメージを受けやすい。このことは覚えておくといいのではないでしょうか。