「こんなにまずかったとは・・・」幸楽苑社長が激白 マイスター制度でリベンジ果たせるか?

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「こんなにまずかったとは・・・」幸楽苑社長が激白。マイスター制度でリベンジ果たせるか?

後継社長の拡大路線で店が荒れたラーメンチェーン幸楽苑。創業者の新井田傳会長が社長に復帰して2年が経過し、利益面では着実に好転してきているが、売り上げは伸び悩んでおり、完全復調とはいえない状況だ。先ごろ開催された会社説明会で、幸楽苑のかかえる問題の本質と、その打開策について新井田社長が熱く語った。

まず、過去2年の取り組みの総括。1年目は「客は口コミ来店が一番」という理由から広告宣伝費をカット。2年目は修繕、求人を外部に頼まず自前化。さらに工場でできることは工場に任せて工場稼働率を上げると同時に店舗経費を節減するなど、食材費、燃料費の上昇をこなしてきた。

ただ、コストダウンはできたが、根本的な問題が残っている。売り上げ面では既存店の不振が続いているからだ。当初は、急速な出店にQSC(品質、サービス、清潔)が追い付かなかったことが原因だと分析し、クレーム撲滅こそが最善策と考えた。「入店しても案内しない」「注文を取りに来ない」といったクレームをなくすことに力を入れた。撲滅運動の結果、少ない時でも月500件あったクレームは100以下に減った。それでも既存店売上高が07年5月以降、前年同期比100%を超えられない。原因は客単価ではなく、客数。客足が戻らないのだ。

客はクレームを出さずに来店しなくなってしまった

原因を究明すべく、社長自ら店の厨房に入ってみた。今年夏のことである。各店を比べて驚いた。多くの店で調理マニュアルが徹底されていないのだ。食べてみる。「私がこんなことを言うのも何だが、こんなにまずいものをお客様に出していたのか、と。QSCの向上に努めてきたが、SとCに偏っていた。お客様は『味がいつもとちょっと違う』程度ではクレームを出さない」(新井田社長)。客はクレームを出さずに来店しなくなってしまった、というわけだ。

そこで、全店の品質を統一するために、主要3品(ギョーザ、チャーハン、麺)に資格制度を導入した。マイスター制度がそれだ。すでに始まっているのが、ギョーザマイスター。10月4日から11月14日の間に資格試験を実施した。まず、マニュアルを丸暗記させ、次に実際に調理させる。その際、暗記したマニュアルを口に出しながら作業をさせる。途中で詰まったら不合格。店長など445人が受検し、結果は合格422人、不合格23人。不合格者は追試を受けなくてはならない。

マイスターとなった店長が、今度は店舗で同様の試験を実施し、最終的には全店舗、全時間帯にマイスターが焼いたギョーザを出せるようになる。今後、同様の資格制度をチャーハン、麺にも導入していく。「マニュアル通りにできれば、おいしい。品質を上げることでリピーターを増やし、来期既存店売上高100%を達成する」(新井田社長)考えだ。

結局は、ラーメン、ギョーザ、チャーハンが重要、という点に帰着した。「客数が戻らないことで迷いが生じ、いろいろな業態を試したが、迷いの中で生まれた業態がうまく行くはずがない」(新井田社長)ため、すでに化学調味料不使用ラーメンの「天下無双」は全店「幸楽苑」に業態転換した。中部、関西で実験している定食もメニュー数を絞っていく方針だ。

筒井 幹雄 東洋経済 記者

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つつい みきお / Mikio Tsutsui

『会社四季報』編集長などを経て、現職は編集委員。

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