古河電気工業の今期は円高で減額、「文春さん、会社四季報はこのように予想しております」

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古河電気工業の今期は円高で減額、「文春さん、会社四季報はこのように予想しております」

古河電気工業の今2009年3月期業績について、9月発売の「会社四季報秋号」の四季報予想に対し、11月発売の「週刊文春」が「大きすぎるのではないか」と、指摘した。四季報予想は、売上高1兆2200億円、営業利益480億円、経常利益415億円、最終利益275億円。会社予想は1兆2100億円、営業利益460億円、経常利益345億円、最終利益241億円である。週刊文春の指摘は、経常利益の差額70億円に向けられたものだ。

古河電工が11月10日に減額修正を発表し、現時点では「東洋経済オンライン」予想もそれを踏襲する(表記予想)ので、秋号予想は「ハズレ」である。が、週刊文春の記事は、会社広報の「四季報予想は大きすぎる」というコメントを錦の御旗とするだけで、四季報編集部に個別銘柄(この場合古河電工)の予想について「なぜこの予想数字になるのか」という取材をしているわけでもない。そこで、秋号予想の根拠と現在の予想が会社予想と同じになる理由について説明したい。

秋号予想は会社予想に対して、売上高100億円、営業利益20億円、経常利益50億円の上乗せになっている。8月発表の4~6月期決算後の取材で、4~6月期実績ですでに営業利益は10億円ほど予算超過になっていることが明らかになった。さらにアルミ子会社・古河スカイへの同様の取材で、アルミ厚板などが想定に比べて強く、通期で最低10億円の上振れはありうる、との感触を得た。そのため、アルミ中心に売上高を上乗せし、営業利益を計20億円増額したわけだ。

経常利益50億円分は、すべて為替。古河電工は米国子会社に630億円を円建で貸し付けていて、これは米国ではドル資産となっているため、決算期末に為替の評価差損が発生する。会社側は09年3月期の為替レートを1ドル=100円と予想し、5月の決算発表時には65億円の差損が出る、としていた。米国子会社は12月決算なので、この差損は1~3月期の実績である。その後、為替レートは円安に振れ、6月末は106円。8月の4~6月期決算会見で櫻日出雄取締役CFOは、想定よりもレートが円安に振れたことで為替差損益は50億円改善した、と強調している。

業績予想を立てるときも、会社が経営計画を立てるときも、その時点での為替レートを前提に用いるのが普通である。営業利益の20億円、営業外の50億円の合計70億円が期初予想を据え置いた会社予想との乖離の理由である。実際、4~9月期実績と会社期初予想を比べると、営業利益は8月以降の落ち込みで両者に差はないが、経常利益は会社期初予想を50億円上回る170億円の着地となっている。どこが「大きすぎる」のか。確かに会社広報のコメントで為替についても多少言及があるが、ここまで説明しないと読者は理解できない。人のふんどしで相撲を取るのがならいとはいえ、他社の出版物を批判する以上、もう少しマジメにやるのが礼儀だろう。

結局、秋号発売後のリーマンショックにより、製品需要、燃料費、為替などの前提がすべて違ってしまった。古河電工の場合、海外光ファイバー、電力用ケーブルは堅調だが、建設用ケーブル、伸銅品が軟化、アルミも10億円の上乗せは難しい(増額幅3億円に修正)。また、為替が期末に106円に戻るとも考えにくい。以上から、現時点での「東経オンライン」予想は会社予想に合わせている(アルミの増額は古河電工連結では誤差の範囲)。

なお、巨額の為替差損益の原因となっていた円建て貸付金は、貸付先である米国子会社の役割終了による会社清算で解消される。清算会社は保有資産を古河電工に代物弁済し、不足分は損失となるが、すでに貸倒引当金が積まれている上、子会社を通じて投資していた光ファイバー孫会社への投資損が確定することで、212億円の繰延税金資産を計上する。一方で、栃木県小山市の旧古河マグネシウム工場跡地の鉱滓処理費用117億円を引き当てるため、前述の税効果を丸々満喫というわけにはいかない


《東洋経済・最新業績予想》
 (百万円)    売 上  営業利益   経常利益  当期利益
連本2008.03    1,174,247     48,447     40,831     15,291
連本2009.03予   1,140,000     40,000     26,000     29,000
連本2010.03予   1,120,000     36,000     34,000     20,000
連中2008.09      583,948     21,149     17,063     24,952
連中2009.09予     565,000     19,000     18,000     11,000
-----------------------------------------------------------
          1株益\    1株配\
連本2008.03         21.8          7 
連本2009.03予        41.4          7 
連本2010.03予        28.6          7 
連中2008.09         35.7        3.5 
連中2009.09予        15.7        3.5 
筒井 幹雄 東洋経済 記者

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つつい みきお / Mikio Tsutsui

『会社四季報』編集長などを経て、現職は編集委員。

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