世田谷価格の幻想には、大手デベロッパーも足をすくわれた。東急田園都市線桜新町駅から徒歩15分。閑静な住宅街を歩き続けると、大規模マンションが姿を現す。東急不動産が開発した「ブランズシティ世田谷中町」だ。D・E・F街区は2017年1月、A・B・C街区は17年7月に竣工したが、10月末時点で総戸数252戸中123戸にはいまだ家主が見つかっていない。
「世代循環型の街づくり」――。それは東急不動産肝いりのプロジェクトだった。約1万坪という広大な敷地に大規模マンションとサービス付き高齢者向け住宅を整備し、静かな住環境と世代間交流がウリだった。だが顧客の眼は厳しく、利便性重視のトレンドにはあらがえなかった。同社幹部は「じっくり売っていく物件だ」と強気の姿勢を崩さないが、現場では値引き提案がなされるなど溝は深い。
世田谷区の静かさや緑の多さという利点は、今や利便性の後塵を拝する。物件検索サイトが普及し、「徒歩10分」や「徒歩5分」などの検索条件でふるいにかけられることも、駅からの距離がある物件には逆風だ。
価格転嫁を避ける“合理化”で商品力が劣化
「土地代+建設費用+販売管理費(広告費や営業経費)+業者の利益」、新築マンションの価格はこうした計算式で決まる。土地代と建設費用が高騰する中で、企業は値上げを余儀なくされてきた。気づけば首都圏マンション平均価格は平成バブル期並みだ。2018年上半期の5962万円は、1991年の5900万円を上回る。価格転嫁を避けるため、企業は”合理化”で吸収しようともした。だが、それによって住戸が狭くなって、商品力が劣化したことは、かえって客を遠ざける要因になったようだ。
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