外資金融マンたちの黄昏 欧米系はリストラ続行中、若手は“奴隷"に悩む
――日本国内では、いわゆるアベノミクス効果に伴って金融ビジネスが活況を呈しているのに?
大手証券会社など日系の金融機関と外資系投資銀行を比べてみると、日系のほうがアベノミクスの恩恵が大きいです。たとえば、日本の大手企業が海外大手を買収するようなクロスボーダーM&A(企業の買収・合併)は、外資系金融機関の得意とするところですが、この円安で案件が少なくなっている。日系金融機関が、よく手掛ける社債の引き受けも、外資系金融機関はあまり案件を取れていません。
大型増資の引き受けを海外投資家向けに販売するビジネスについても、外資系金融機関の優位が薄れているようです。『日系金融機関が海外の出先で現地の投資家に日本株を売るのはハードルが高く、外資系が有利』という話もありますが、日本株の評判がいいので、海外投資家がみずから日本に買いに来ているという話を聞きます。
人事政策は通常グローバル、今回は例外的
――しかし、グローバルにみれば欧米系の金融機関も業績は回復基調にあるのでは?
それが問題です。グローバルベースでみれば、投資銀行部門は好調ですが、それが日本法人の陣容拡大につながっていません。私は24年間、金融分野の人材コンサルティングに従事していますが、外資系金融機関の日本法人における人材需要は、つねに本社の業績を反映していました。人事政策はグローバルな視点から進められるからです。ところが、今回は例外的な動きとなっている。外資系金融機関の本社が、日本の金融市場に対して『厳しい評価』をしているからだと、考えられます。
――小溝さんは、「日本で外資系金融機関の優位性が落ちている」と指摘されています。
1990年代以降に欧州で金融革命が起こり、米国系から欧州系に優秀な人材が流れました。欧米系の金融機関は日系金融機関からも人材を求めた。山一証券をはじめ、破綻する日系金融機関が相次いだこともあり、需要と供給がうまくバランスしました。
そして日系から外資に移ると、最先端の金融技術が勉強できました。デリバティブ(金融派生商品)を中心としたイノベーションを吸収できたのです。2000年代に入っても、証券化やM&Aなど、エキサイティングとも言えるビジネスをグローバルに展開できるということで、日本の金融市場において外資系投資銀行は非常に高い存在感を見せた。
ところが、リーマンショックをきっかけに、金融分野の規制が強化されたこともあって、イノベーションは停滞してしまっています。新しい金融商品や金融手法が出てこなくなった。日系の金融機関も手法を学びました。外資系だからという優位性は、グローバルに展開できるかということぐらいになってきている。