経営成績は圧勝、浦和レッズ、強さの秘密--本物の”サッカー”にこだわる
浦和レッドダイヤモンズ(レッズ)の快進撃が続いている。2006年にJリーグ初優勝を果たすと、翌07年にはアジアチャンピオンの座を獲得。08年シーズンも、首位を争いにからんでいる。レッズをここまでに育て上げた前社長の犬飼基昭氏は、7月に日本サッカー協会会長に就任。今や、レッズは名実ともに日本サッカー界の顔と呼べる存在となっている。
レッズは集客面でもJリーグを引っ張る。主催試合の平均入場者数(07年)は、4万6667人で断トツ。02年以降、右肩上がりで増え続け、直近5年で1・8倍に増加した。
レッズに次ぐ集客力を誇るアルビレックス新潟の平均入場者数は、3万8000人前後を行ったり来たり。J1全体平均も1万9000人近辺で伸び悩む。その中で、今も入場者数を伸ばし続けるレッズの存在感は際立っている。
無料チケットはなし スタジアムに一体感
レッズの集客策の肝は、独特のスタジアムづくりにある。
DJ、チアリーダー、ハーフタイムのイベント……。試合を彩る幾多のファンサービスは、スポーツの興行に欠かせない要素だ。ところが、レッズの試合にこうしたサービスは存在しない。
浦和といえば、昔からのサッカーどころ。もともと、見る目の肥えた本格的なサッカーファンが多い土地柄だった。「街の本物志向に合わせた対応」(白戸秀和・浦和レッズ事業本部副本部長)。サッカーに関係のない過剰なサービスはスタンド内から排除し、純粋にサッカーのみを味わえる環境づくりを徹底した。
無料チケットも配らない。他のクラブでは、地域還元の一環として地元住民に招待券を配布することが一般的だ。レッズも女子チームの無料券配布をサポーターに提案したことがある。
だが、彼らは即座に拒否した。「俺たちはレッズに飼われて応援しているわけではない。払いますよ」。自分たちの街のチームだから、チケットを買って応援するのは当然。サポーターのそんな姿勢が、スタジアムの応援に絶妙な一体感を生み出している。
スタンドの外はサポーターの社交場。試合の前後には、スタジアム前の広場にケータリングカーが並び、即席のフードコートが出来上がる。サポーターたちは、ただレッズの試合を観に来るのではなく、スタジアムで仲間に会い、サッカーについて熱く語り合う。
Jリーグの調査によると、レッズの主催試合の平均同伴者数(06年)はリーグトップの6・2人。2位(札幌)の3・8人を大きく引き離す。多くの仲間と連れ立って試合を楽しむという観戦スタイルが定着していることを示す。
「レッズの試合独特の、ゾクゾクする雰囲気を味わってもらいたい」。そんな思いから、サッカー観戦初心者の友人を連れてくるサポーターも多い。サッカーのための濃密な非日常空間は、サポーターが新たなサポーターを生む、理想的な集客サイクルをつくり出している。
(週刊東洋経済 写真:尾形文繁)
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