日立vs三菱重工、7600億円を「押し付け合い」 火力発電事業めぐり請求額が一気に倍へ拡大

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ここに来て請求金額を2倍に引き上げた三菱重工は「請求は事実だが、詳細はお答えできない」とするが、大幅な納期遅れに伴うコストオーバー分を再算定し、統合前の日立の責任として請求したものと考えて間違いない。同プロジェクトはMHPSが引き継いだ後の2015年8月に1基目がようやく運転を開始したが、終わりはまだ見えない。

妥協点を見い出せるか

この請求について、日立は「法的根拠に欠けるため請求に応じられない」、三菱重工は「契約上、請求権の根拠がある」と平行線。一方、両社とも誠実に交渉を続けると強調する。

2012年11月、火力発電システム分野での事業統合を発表する両社。固い握手を交わしたが・・(撮影:山内信也)

しかし、ここまで金額に開きがある中で妥協点を見い出せるのか。合意できない場合、契約では解決策も定められているもようだが、それで納得できるかはわからない。真っ向から対立している以上、安易に妥協すれば、それぞれ株主代表訴訟のリスクもあるからだ。

三菱重工側は請求額の一部を貸借対照表の「その他流動資産」に計上しており、支払いがなされなければ損失を計上することになる。対する日立は、合理的に見積もった金額は引き当てているとするが、その金額は非開示。だが、少なくとも7000億円といった金額でないことは確かだ。いずれにしろ、どちらか、もしくは両社とも数千億円の損失計上のリスクを抱えていることになる。

大型プロジェクトでのコストオーバーといえば、東芝の米国原子力発電所案件がある。三菱重工でも大型客船、国産旅客機MRJなどで大きな傷を負った。

ビジネスが大型化、グローバル化する中、受注時のリスク管理とプロジェクト遂行中のマネジメントを失敗すれば、名門企業といえども経営が傾きかねない。両社にとっても、その影響は決して小さくなさそうだ。
 

山田 雄大 東洋経済 コラムニスト

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やまだ たけひろ / Takehiro Yamada

1971年生まれ。1994年、上智大学経済学部卒、東洋経済新報社入社。『週刊東洋経済』編集部に在籍したこともあるが、記者生活の大半は業界担当の現場記者。情報通信やインターネット、電機、自動車、鉄鋼業界などを担当。日本証券アナリスト協会検定会員。2006年には同期の山田雄一郎記者との共著『トリックスター 「村上ファンド」4444億円の闇』(東洋経済新報社)を著す。社内に山田姓が多いため「たけひろ」ではなく「ゆうだい」と呼ばれる。

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