満員電車では中吊り広告の「出番」が大きい 目下のデジタル広告は情報量が少なく力不足

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広告不況が経済不況の産物である以上、バブル期のような華やかなりし時代の再来は望めない。また、景気のいかんによらず、広告が、インプレッションやアジテーション、メッセージの象徴であった時代は、とうの昔に終わっている。人はもはや一斉かつ簡単に乗ってくるものではない。調べ、比べ、あらゆる選択肢から吟味する。その取捨選択のために、インフォメーション、新鮮かつ正確で口コミのようなリアルな体験を重視した高い情報が求められるようになっている。

鉄道広告も例外ではない。遠くからでも一目でわかるキャラクターやロゴが躍るラッピング車両、巨大ポスターに女優の顔ドーン、煽り系のメッセージに商品写真、デザインにモノ言わせたアート系、そのような従来の車体広告あるいは車内広告より、読ませる系、きちんと「読まれる」、ゆっくり「見られる」、環境の利を生かした広告がより求められているのではないか。

一瞬から、1分間へ

購読者減少に悩む新聞は「新聞を読まないなんて社会人失格」的な煽りメッセージの横で、イケメンサラリーマンがコーヒーと新聞片手にポーズをばっちり決める広告よりも、20年前の同じ月や週の新聞記事や4コマ漫画などをニュースの大小問わずずらりと並べたほうが、ずっと新聞の存在意義を再認識してもらえるかもしれない。学生獲得に努める大学であれば、リア充系在校生が笑顔でバラ色のキャンパスライフを謳うキャッチフレーズではなく、シラバスやカリキュラム、卒業生の進路一覧を載せる。銀行や信用金庫なら、子育て世帯や年金生活者、40代独身、さまざまなライフスタイルにおける1カ月の家計診断を淡々と並べる。

デジタルサイネージを使うことを考えるなら、沿線の街の風景、列車の先頭車両や最後尾車両から見える情景を、延々と何の説明もなくただ流すほうがずっと人目を集めるかもしれない(鉄道や旅行、町おこしなど広告用途は限られるが)。飛行機内で、現在の飛行位置を示す地図やコックピットからの風景が映ると、興味深くずっと眺めている人が多いように、無機質でありながら刻々と変化する情景に安らぎを覚える人は多いものだ。

広告が、「一瞬で注目を集めるインパクト」から「つい読んでしまう」、「じっくり眺めてしまう」中身に比重が増していくなら、アナログ、デジタルを問わず、車内広告がスマホや車窓より優位に立てる好機と可能性は、まだある。

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